6カ月齢から14カ月齢の乳用育成牛に配合飼料の30%を籾米サイレージと大豆粕で代替給与しても,発育や繁殖性に影響はなく,約11%飼料単価を削減でき,代替飼料として有用である

輸入飼料の価格高止まりが続くなか,より低コストの国産飼料の活用が必要である。近年,主食用米の需要減少や国産飼料増産のために主食用米から飼料用米の作付け転換が推奨され,利用方法の拡大が求められている。酪農経営において一定の飼養頭数を有し,より低コストでの飼養管理が求められている乳用育成牛への飼料用米利用についての報告は少ない。そこで本研究では,飼料用米の中でもより低コストでの利用が可能である籾米サイレージを,生後6カ月齢から14カ月齢までの育成牛に給与し,牛体への影響(嗜好性,発育性,健全性,繁殖性)と,経済性についで慣行給与と比較検討し,籾米サイレージ給与の有用性を明らかにすることを目的とした...

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Veröffentlicht in:熊本県農業研究センター研究報告 = Research bulletin of the Kumamoto Prefectural Agricultural Research Center 2022-03 (29), p.23-31
Hauptverfasser: 秋好, 佑紀, 鶴田, 勉, 網田, 昌信
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:輸入飼料の価格高止まりが続くなか,より低コストの国産飼料の活用が必要である。近年,主食用米の需要減少や国産飼料増産のために主食用米から飼料用米の作付け転換が推奨され,利用方法の拡大が求められている。酪農経営において一定の飼養頭数を有し,より低コストでの飼養管理が求められている乳用育成牛への飼料用米利用についての報告は少ない。そこで本研究では,飼料用米の中でもより低コストでの利用が可能である籾米サイレージを,生後6カ月齢から14カ月齢までの育成牛に給与し,牛体への影響(嗜好性,発育性,健全性,繁殖性)と,経済性についで慣行給与と比較検討し,籾米サイレージ給与の有用性を明らかにすることを目的とした。試験では,乳用ホルスタイン種5頭を対照区(粗飼料と配合飼料で飼育)に配置し,7頭を30%代替区(配合飼料の30%を籾米サイレージ(22.2%)と大豆粕(7.9%)で代替)に配置した。30%代替区の飼料組成は,乾物中のTDN a)%およびCP b)%の設計値を対照区(TDN67.3%,CP18.2%)と差がないよう大豆粕で調整し,TDN67.4%,CP18.1%と設計した。その結果,嗜好性は試験期間中に30%代替区の残飼がほとんどなかったことから,籾米サイレージの影響は認められなかった。30%代替区の14カ月齢の体重,体高は441.6kg,135.1cmであり,繁殖に供することができる基準(350kg,125cm)を超え,平均日増体量は基準とした0.80~1.00kgの範囲内の1.00kgであり,発育性に籾米サイレージの影響は認められなかった。健全性の検討のため,血液性状を調査したが,育成牛の正常値が確立されておらず,本試験だけでの評価は困難である。あえて本試験での参考値と比較すると,30%代替区,参考値の順にT-Pro c,d)は4.6±1.2g/dL,7.1±0.6g/dL,Alb c,e)は2.4±0.7g/dL,3.5±0.4g/dL,T-Cho f,g)は75.2±15.7mg/dL,92.1±16.7mg/dLとなり,いずれも参考値よりも低い値を示した。BUN c,h)およびGOT c,i),Glu f,j)は参考値の範囲内であった。繁殖性において,対照区,30%代替区の順に初回授精受胎率は40.0%,42.9%,平均受胎月齢は16.5カ月齢,15.0カ月齢,受胎までの平均授精回数は2.6回,2.1回であった。発育性や繁殖性に影響がなかったことから,籾米サイレージの牛体への影響はなかったと考えられた。さらに,各区の乾物1kg当たりの飼料単価は対照区60.4円に対し,30%代替区54.0円,配合飼料費においては順に91.7円,75.7円であり,飼料単価を約11%,配合飼料費を約17%削減が可能であった。以上から,籾米サイレージ給与は乳用育成牛の牛体に影響を及ぼさず,経済性も優れており,乳用育成牛飼料として有用であることが示唆された。
ISSN:0915-8510