尾瀬ヶ原湿原におけるヒツジグサ(Nymphaea tetragona Georgi)の特徴的な池溏内分布の分析

ヒツジグサ(Nymphaea tetragona Georgi)とオゼコウホネ(Nuphar pumila (Timm) DC. var. ozeensis H. Hara)は尾瀬ヶ原湿原の池溏に生育する代表的な浮葉植物である。2017年8月に上田代の40池溏で水生植物の分布を調査し,1970年代以降のヒツジグサの分布拡大とオゼコウホネの減少傾向が現在も継続していることを確認した。以前よりヒツジグサは池溏内で特異な分布を示すことが知られており,それが生じる要因を明らかにするため,2018年8月に上田代の3池溏においてヒツジグサの生育状態と底質環境を調査した。ヒツジグサが全面に分布する池溏では,...

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Veröffentlicht in:Rikusuigaku zasshi 2021-09, Vol.82 (3), p.189-201
Hauptverfasser: 永坂, 正夫, 福原, 晴夫, 高野, 典礼, 藤原, 英史
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:ヒツジグサ(Nymphaea tetragona Georgi)とオゼコウホネ(Nuphar pumila (Timm) DC. var. ozeensis H. Hara)は尾瀬ヶ原湿原の池溏に生育する代表的な浮葉植物である。2017年8月に上田代の40池溏で水生植物の分布を調査し,1970年代以降のヒツジグサの分布拡大とオゼコウホネの減少傾向が現在も継続していることを確認した。以前よりヒツジグサは池溏内で特異な分布を示すことが知られており,それが生じる要因を明らかにするため,2018年8月に上田代の3池溏においてヒツジグサの生育状態と底質環境を調査した。ヒツジグサが全面に分布する池溏では,岸部と中央部でヒツジグサの浮葉の被度,浮葉の密度には違いは見られず,池底に堆積している腐植泥の厚さ,採取した底泥の繊維含量,灰分率,全リン量にも差は見られなかった。しかし岸寄りの周縁部でヒツジグサの分布がみられないへりなし型と呼ばれる池溏では,周縁部と中央部で堆積している腐植泥の厚さが異なり,中央部に向かってヒツジグサの浮葉の密度か被度のいずれか,葉身のサイズは増大し,底泥コア0~10 cm層の全リン量,灰分率は中央部において高かった。へりなし型の分布は,その周縁部のヒツジグサの生育が底泥の肥沃度によって制限されて生じる可能性が示唆された。
ISSN:0021-5104