マイクロサテライト遺伝子座を利用した日本産ハーバーシールの個体識別法

近年では,糞,毛,羽などから遺伝情報が得られるようになり,銃やボーガンを使用して,遠距離から非直接的なサンプルが取れるようにもなった。しかし,このようなサンプルは,同一個体から複数回サンプリングしてしまう可能性があるため,遺伝子による個体識別が必要不可欠である。遺伝子を利用した個体識別は,一般的に複数のマイクロサテライト遺伝子座を使って行われる。個体識別に必要な遺伝子座とその数は,事前に既知のデータから遺伝子座ごとに重複率(PID:probability of identity)PID(obs)を算出して決定しておくことが望ましい。しかし,サンプル数が多く手に入らない場合,得られたサンプルの範...

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Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:Tokyo Nōgyō Daigaku nōgaku shūhō 2020-06, Vol.65 (1), p.33-38
Hauptverfasser: 水野, 米利子, 小林, 万里, 佐々木, 剛
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:近年では,糞,毛,羽などから遺伝情報が得られるようになり,銃やボーガンを使用して,遠距離から非直接的なサンプルが取れるようにもなった。しかし,このようなサンプルは,同一個体から複数回サンプリングしてしまう可能性があるため,遺伝子による個体識別が必要不可欠である。遺伝子を利用した個体識別は,一般的に複数のマイクロサテライト遺伝子座を使って行われる。個体識別に必要な遺伝子座とその数は,事前に既知のデータから遺伝子座ごとに重複率(PID:probability of identity)PID(obs)を算出して決定しておくことが望ましい。しかし,サンプル数が多く手に入らない場合,得られたサンプルの範囲内で予測値を推定する方法がある。PIDの予測値には,ハーディー・ワインベルグ平衡下の集団で血縁のない個体間の重複率(PID(theo))と,兄弟関係にある個体間の重複率(PID(sib))があり,実際の集団の重複率は,PID(theo)を下限,PID(sib)を上限と2つの予測値の間に位置するため,多くの動物では,PID(sib)の利用が推奨されている。本研究では,先行研究で集団が分かれることが示唆されているえりもと道東のハーバーシール2集団で,別個体と判明しているサンプルを基にPID(obs)と,2つの予測値を比較し,個体識別に必要な遺伝子座および遺伝子座数,予測値を算出するのに必要なサンプル数を決定した。その結果,日本のハーバーシールのPID(obs)は,PID(theo)とほぼ同等の値であり,4遺伝子座の使用で個体識別が可能であることを示した。一方で,個体識別に適した遺伝子座は,えりもと道東で異なった。さらに,日本のハーバーシールでは,20サンプルからPID(theo)を算出すれば,個体識別に有用な遺伝子座数の決定が行えることが示唆された。
ISSN:0375-9202