開発途上国における農業と栄養

栄養問題は,重要度・国際的な注目度ともに高い,最優先で取り組むべき地球規模課題の1つである。栄養不良には,飢餓だけでなく肥満や微量栄養素欠乏なども含まれ,現在すべての国が何かしらの栄養不良を抱えているとも言われている。栄養に関連する数多くのセクターのうち,農業は,食料生産を通した栄養供給を行うことで栄養改善に貢献できる重要なセクターである。ただ,農業と栄養とは食料を通じてリンクしているとはいえ,その経路は単純ではない。生産性の向上はもちろん,保存加工技術の向上,食の多様化や栄養強化,さらには栄養知識の普及など,さまざまな取り組みを通して,栄養の量・質ともに改善をはかるべきであろう。また本稿では...

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Veröffentlicht in:開発学研究 2019-12, Vol.30 (2), p.20-26
1. Verfasser: 白鳥, 佐紀子
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:栄養問題は,重要度・国際的な注目度ともに高い,最優先で取り組むべき地球規模課題の1つである。栄養不良には,飢餓だけでなく肥満や微量栄養素欠乏なども含まれ,現在すべての国が何かしらの栄養不良を抱えているとも言われている。栄養に関連する数多くのセクターのうち,農業は,食料生産を通した栄養供給を行うことで栄養改善に貢献できる重要なセクターである。ただ,農業と栄養とは食料を通じてリンクしているとはいえ,その経路は単純ではない。生産性の向上はもちろん,保存加工技術の向上,食の多様化や栄養強化,さらには栄養知識の普及など,さまざまな取り組みを通して,栄養の量・質ともに改善をはかるべきであろう。また本稿では,貧困や栄養不良が深刻で,食事に占めるコメの割合が多いマダガスカル国を例として,栄養素の過不足や栄養素供給源を分析した研究を紹介する。FAOの食料需給表から栄養需給バランスを算出した結果,カルシウムやビタミンA等の栄養素では不足が推測された。栄養素供給源も含めて検討すると,コメ等の植物性食品が多い一方,動物性食品の摂取量が少なく,アミノ酸スコアの不足や微量栄養素の吸収率の低さも見込まれた。これらの結果より,野菜や豆類の栽培,小規模養殖や家畜の飼育を促し,入手できる食料を有効活用した栄養改善に効果的な調理法を検討し普及させることが,マダガスカルでの動物性タンパク質や微量栄養素の補完に有益だと考えられる。
ISSN:0918-9432