エネルギー作物エリアンサスの穂の発育形態学

石油枯渇や地球温暖化の対応策として,バイオマス作物の利用が注目されており,著者らは,食糧生産との競合を避けるためにセルロース系エネルギー作物のエリアンサス(Saccharum spp.)に着目している.エリアンサスは日本で栽培すると毎年,秋に出穂するが,その穂の形態と幼穂形成については明らかでない.エリアンサスの物質生産の基礎となる分げつの生育を理解し,群落構造との関係を考察するための基礎知見を得るため,本研究では穂の構造および幼穂形成過程を検討した.エリアンサスの穂は複総状花序で,穂全体の外観からは円錐花序にも分類される.穂長は50 cm 程度で,穂軸からは4 本前後の1 次枝梗が一定の間隔...

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Veröffentlicht in:Japanese journal of crop science 2019/10/05, Vol.88(4), pp.273-279
Hauptverfasser: 金井, 一成, 谷津, 威徳, 森田, 茂紀
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:石油枯渇や地球温暖化の対応策として,バイオマス作物の利用が注目されており,著者らは,食糧生産との競合を避けるためにセルロース系エネルギー作物のエリアンサス(Saccharum spp.)に着目している.エリアンサスは日本で栽培すると毎年,秋に出穂するが,その穂の形態と幼穂形成については明らかでない.エリアンサスの物質生産の基礎となる分げつの生育を理解し,群落構造との関係を考察するための基礎知見を得るため,本研究では穂の構造および幼穂形成過程を検討した.エリアンサスの穂は複総状花序で,穂全体の外観からは円錐花序にも分類される.穂長は50 cm 程度で,穂軸からは4 本前後の1 次枝梗が一定の間隔をおいてまとまって分枝するが,この間隔は向頂的に狭くなる.また,1 次枝梗からは2 次枝梗が,さらに2 次枝梗からは3 次枝梗が,それぞれ互生で分枝する.穂軸および各次元の枝梗の先端と,穂軸および各次元の枝梗の上に小穂が着生する.小穂には有柄小穂と無柄小穂とがあり,通常は対をて着生するが,穂軸および各次元の枝梗の先端には有柄小穂が着生する.有柄小穂および無柄小穂のいずれも1 小穂1 小花であり,その構造は柄の有無を除いて基本的に同じで,1 対の護穎の内側に1つの小花が位置する.小花は外穎と内穎,その内側の2 枚1 組の鱗皮,3 本の雄蕊,1 本の雌蕊(心皮)からなる.幼穂形成過程は, ステージ0の栄養相を除いて,同1:苞原基分化期,同2:1 次枝梗分化期,同3:高次枝梗分化期,同4:小穂分化期,同5:小花分化期に分けられる.以上の穂の基本構造と幼穂形成過程に関する知見は,エリアンサスの生育を理解するために役立つものと考えられる.
ISSN:0011-1848
1349-0990
DOI:10.1626/jcs.88.273