気象条件及び生育量による水稲「コシヒカリ」の稈長の簡易推定モデル

水稲栽培において幼穂形成期(幼穂長1 mm)から出穂期までの窒素追肥は,収量を増加させる重要な栽培技術であるが,稈の伸長を促し,倒伏を助長させ,減収を招く場合がある.このため,追肥を標準施用した場合の稈長を予測し,予測した稈長に応じて追肥を施用することで,増収を図りながら倒伏を回避する生育診断技術が開発されている.従来の診断技術は追肥前の生育量のみを指標に診断しており,診断に従って施肥しても稈が予測以上に長くなり,倒伏を招く一因となっていた.そこで,本研究では追肥前の生育量と幾つかの気象条件を用いて,追肥を標準施用した場合の「コシヒカリ」における稈長の簡易推定モデルの作成を試みた.千葉県の水田...

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Veröffentlicht in:Japanese journal of crop science 2019/04/05, Vol.88(2), pp.132-142
Hauptverfasser: 望月, 篤, 鶴岡, 康夫, 中川, 博視
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:水稲栽培において幼穂形成期(幼穂長1 mm)から出穂期までの窒素追肥は,収量を増加させる重要な栽培技術であるが,稈の伸長を促し,倒伏を助長させ,減収を招く場合がある.このため,追肥を標準施用した場合の稈長を予測し,予測した稈長に応じて追肥を施用することで,増収を図りながら倒伏を回避する生育診断技術が開発されている.従来の診断技術は追肥前の生育量のみを指標に診断しており,診断に従って施肥しても稈が予測以上に長くなり,倒伏を招く一因となっていた.そこで,本研究では追肥前の生育量と幾つかの気象条件を用いて,追肥を標準施用した場合の「コシヒカリ」における稈長の簡易推定モデルの作成を試みた.千葉県の水田圃場(千葉市・壌土)で追肥を標準施用(幼穂長10 mm時に窒素成分で3 g m–2)して栽培した12年間の作期移動試験データ(n=55)を解析し,出穂前50~4日の最低気温,出穂前44~36日の全天日射量,幼穂形成期の草丈,葉色及び茎数×葉色を説明変数とする稈長の簡易推定モデルを作成した(二乗平均平方根誤差(RMSE)=3.01 cm).本モデルの検証を,別試験のデータセットで行ったところ,RMSEは2.68~2.76 cmであった.また,本モデルを用いて,稈長が90 cm以下(倒伏防止のための千葉県の目標値)となるかを推定したところ,その正答率は77~91%であり,従来の追肥前の生育量のみを指標とした生育診断技術を用いた場合より高かった.このことは,生育量のみに基づく生育診断に,気象条件も考慮することにより,稈長の推定精度が高まり,より的確な追肥判断ができることを示唆している.
ISSN:0011-1848
1349-0990
DOI:10.1626/jcs.88.132