乳酸菌を用いた多剤耐性菌の殺菌効果の検討とプロテアーゼ耐性バクテリオシンの評価

近年,多量の抗生物質の使用により多剤耐性菌が数多く出現しており,ヒトへの感染拡大が危惧されている。そこで抗生物質に代わり,安全性の高い乳酸菌のバクテリオシンを使用して,多剤耐性菌のリスクを低減できないかと考えた。保有する908菌株の乳酸菌から JCM1002 株と C107 株に対して強い抗菌活性を示す27菌株をバクテリオシン活性株として選抜した。また,食品や豚糞便から11菌株を薬剤耐性細菌として分離した。バクテリオシン活性株について,JCM1002 株を指標菌として,pH 中性化処理,プロテアーゼ処理,熱処理を行った後抗菌性を試験した。熱および中性化処理により,各上清の抗菌活性は熱耐性および...

Ausführliche Beschreibung

Gespeichert in:
Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:ミルクサイエンス 2016, Vol.65(3), pp.179-190
Hauptverfasser: 石川, 潤一, 木下, 英樹, 菰田, 俊一, 須田, 義人, 石田, 光晴
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
Tags: Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
Beschreibung
Zusammenfassung:近年,多量の抗生物質の使用により多剤耐性菌が数多く出現しており,ヒトへの感染拡大が危惧されている。そこで抗生物質に代わり,安全性の高い乳酸菌のバクテリオシンを使用して,多剤耐性菌のリスクを低減できないかと考えた。保有する908菌株の乳酸菌から JCM1002 株と C107 株に対して強い抗菌活性を示す27菌株をバクテリオシン活性株として選抜した。また,食品や豚糞便から11菌株を薬剤耐性細菌として分離した。バクテリオシン活性株について,JCM1002 株を指標菌として,pH 中性化処理,プロテアーゼ処理,熱処理を行った後抗菌性を試験した。熱および中性化処理により,各上清の抗菌活性は熱耐性および pH 依存性によってグループ化できた。また,プロテアーゼ試験により, Lc. lactis MBR916 株の培養上清が高いプロテアーゼ耐性を示した。本上清は, Bacillus sp. R11 を除き全ての薬剤耐性菌に対して抗菌活性を示した。MBR916 株のバクテリオシンは,抗菌活性スペクトルを比較すると,ナイシン様バクテリオシンであることが推察されたが,高いプロテアーゼ耐性を有すること,推定分子量が異なること,阻止円の特徴が異なることなどから,新奇バクテリオシンである可能性も示唆された。今後,アミノ酸の一次構造を決定し,遺伝子の解析を行う予定である。 本研究において,乳酸菌のバクテリオシンを用いた多剤耐性菌の殺菌の可能性が示された。現在,応用研究として豚糞便を用いたバクテリオシンでの多剤耐性菌殺菌効果の検証を進めており,多剤耐性菌を抑える家畜用の機能性飼料開発が期待される。
ISSN:1343-0289
2188-0700
DOI:10.11465/milk.65.179