生態的種分化 ―適応の視点から多様化のメカニズムを探る
適応と多様化との関係を問う“生態的種分化”は、古典的な仮説でありながらも現代進化生態学において大きな進展を見せている。“異なる環境への適応によって隔離障壁が進化する”というこの仮説は、いわば伝統的な自然選択説の現代版であり、生態学の各分野で蓄積された膨大なデータを、進化生物学分野で培われてきた適応と種分化に関するアイディアによって俯瞰する形で成り立っている。生態的種分化は、進化学や生態学、遺伝学といった複数の分野を横断する仮説であるが、近年のこれらの分野における概念的統合およびゲノミクスとの融合に伴い、理論的に洗練された検証可能な作業仮説として、いまや多様性創出機構の議論に欠かすことのできない...
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Veröffentlicht in: | Nihon Seitai Gakkai shi 2016, Vol.66(3), pp.561-580 |
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Hauptverfasser: | , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Schlagworte: | |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 適応と多様化との関係を問う“生態的種分化”は、古典的な仮説でありながらも現代進化生態学において大きな進展を見せている。“異なる環境への適応によって隔離障壁が進化する”というこの仮説は、いわば伝統的な自然選択説の現代版であり、生態学の各分野で蓄積された膨大なデータを、進化生物学分野で培われてきた適応と種分化に関するアイディアによって俯瞰する形で成り立っている。生態的種分化は、進化学や生態学、遺伝学といった複数の分野を横断する仮説であるが、近年のこれらの分野における概念的統合およびゲノミクスとの融合に伴い、理論的に洗練された検証可能な作業仮説として、いまや多様性創出機構の議論に欠かすことのできないものとなってきた。日本の生物多様性の豊かさを考えたとき、潜在的に多くの生態的種分化の事例が潜んでいるものと思われるが、残念ながら日本の生物を対象とした実証研究は、今のところあまり多くない。このような状況を踏まえ、本総説では特に生態学者を対象として、生態的種分化のもっとも基礎的な理論的背景に関して、その定義、要因、地理的条件、特徴的な隔離障壁、分類群による相違を解説し、また、その対立仮説である非生態的種分化との違いを説明する。さらに、現在の生態的種分化研究の理論的枠組みにおける弱点や証拠の薄い部分を指摘し、今後の発展の方向性を議論する。 |
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ISSN: | 0021-5007 2424-127X |
DOI: | 10.18960/seitai.66.3_561 |