オホーツク海沿岸能取湖の2008年結氷期における海洋環境とクロロフィルaの動態

オホーツク海は漁業資源の豊かな海として知られるが,冬季,海氷に覆われるときの調査研究例はきわめて少ない。その要因としてオホーツク海の海氷の大半は流氷であり,調査が困難であることがあげられる。そこで,本研究では定着氷に着目し,道東オホーツク沿岸域にある能取湖で2008年2月6日から3月18日にかけての結氷期に調査を実施した。本研究の結果,海氷中の積算クロロフィルa量は,2月中は海氷の成長にともない増加し,3月に減少する傾向を示した。特に2月29日から3月10日にかけては,急激に積算クロロフィルa量が減少した。一方,水柱の積算クロロフィルa量は8.7-119.1mg/m2の範囲にあり,調査期間中増...

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Veröffentlicht in:Tokyo Nōgyō Daigaku nōgaku shūhō 2014-12, Vol.59 (3), p.177-183
Hauptverfasser: 西野, 康人, 佐藤, 智希, 谷口, 旭
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:オホーツク海は漁業資源の豊かな海として知られるが,冬季,海氷に覆われるときの調査研究例はきわめて少ない。その要因としてオホーツク海の海氷の大半は流氷であり,調査が困難であることがあげられる。そこで,本研究では定着氷に着目し,道東オホーツク沿岸域にある能取湖で2008年2月6日から3月18日にかけての結氷期に調査を実施した。本研究の結果,海氷中の積算クロロフィルa量は,2月中は海氷の成長にともない増加し,3月に減少する傾向を示した。特に2月29日から3月10日にかけては,急激に積算クロロフィルa量が減少した。一方,水柱の積算クロロフィルa量は8.7-119.1mg/m2の範囲にあり,調査期間中増加する傾向にあった。特に3月18日には急激な増加がみられ調査期間中最大値となった。2008年の結氷期は3月10日前後を境として,海氷生成期から融解期にシフトしたと考えられる。積算クロロフィルa量は,海氷生成期には約25%は海氷中に存在し,融解期では95%以上が水柱に存在し,このシフトによって一次生産の生産構造に変化が起こったことが示唆された。海氷と水柱の値を合算した総積算クロロフィルa量は,2月6日から3月10日までの海氷生成期間には10.9-46.6mg/m2,海氷融解期である3月18日は121.5mg/m2であった。2007年の非結氷期の積算クロロフィルa量と比較すると,前者は8月から12月の積算クロロフィルa量の少ない期間と同程度であり,後者は4月下旬から5月上旬の比較的積算クロロフィルa量が多いときを上回る値であった。すなわち,弱光環境に適応したアイスアルジーや植物プランクトンが,能取湖の結氷期のクロロフィルa量に寄与していることが推察された。
ISSN:0375-9202