長野市街地ツキノワグマ出没個体は人里に依存していたか? : 安定同位体比分析による食性解析

2012年10月5日に長野市市街地に出没して裾花川沿いで射殺されたツキノワグマ(Usrus thibetanus)個体について,年齢査定と胃内容物分析を行うとともに,体毛の炭素・窒素安定同位体比解析による食性履歴の推定を行い,出没原因として人に由来する食物に依存していたかを検討した。その結果,当該個体は3歳の性成熟前後のオスグマで,胃内容物分析から河川沿いでヨウシュヤマゴボウ(Phytolacca americana)を集中的に食べていたと考えられるが,モモ(Amygdalus persica)の種子が1個だけ検出された。安定同位体比解析では,炭素同位体比がやや高い時期が見られて,トウモロコシ...

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Veröffentlicht in:信州大学農学部AFC報告 2013-03 (11), p.25-28
Hauptverfasser: 泉山, 茂之, 中下, 留美子, 岸元, 良輔, 鈴木, 彌生子, 林, 秀剛, 瀧井, 暁子
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:2012年10月5日に長野市市街地に出没して裾花川沿いで射殺されたツキノワグマ(Usrus thibetanus)個体について,年齢査定と胃内容物分析を行うとともに,体毛の炭素・窒素安定同位体比解析による食性履歴の推定を行い,出没原因として人に由来する食物に依存していたかを検討した。その結果,当該個体は3歳の性成熟前後のオスグマで,胃内容物分析から河川沿いでヨウシュヤマゴボウ(Phytolacca americana)を集中的に食べていたと考えられるが,モモ(Amygdalus persica)の種子が1個だけ検出された。安定同位体比解析では,炭素同位体比がやや高い時期が見られて,トウモロコシ等のC4植物を摂取していた可能性も否定できなかったが,依存していたほどの値ではなかった。従って,モモなどの果樹に誘引されて人里に下りてきた可能性も否定はできないが,過度の依存は認められず,河川敷を餌場として利用するうちに偶発的に市街地に入り込んだと推測される。
ISSN:1348-7892