加治川における耳石標識サクラマスの回帰について

サクラマスの最も効果的な放流技術を確立する目的で、耳石標識と外部標識を施した親魚の異なる5系の魚を計10群計88,302尾を1989年3月~1990年4月新潟県加治川へ放流した。1991年3月~10月にかけて加治川に回帰したサクラマス1,076尾のうち888尾を調べ、各群の回帰率を比較した。1. 解析した回帰魚(888尾)の10.70%に当たる95尾が標識魚であった。その内87.4%に当たる83尾は、発眼卵で耳石標識をつけ0+の春(1989年3月)に稚魚で放流した加治川×加治川の系群であった。遡上魚の採捕尾数(1,076)に対する各群の解析尾数の割合で回帰尾数を補正すると、全標識魚数が回帰尾数...

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Veröffentlicht in:新潟県内水面水産試験場調査研究報告 1992 (18), p.38-44
Hauptverfasser: 小池, 利通, 塚本, 勝巳, 関, 泰夫, 大矢, 真知子, 星野, 正邦
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:サクラマスの最も効果的な放流技術を確立する目的で、耳石標識と外部標識を施した親魚の異なる5系の魚を計10群計88,302尾を1989年3月~1990年4月新潟県加治川へ放流した。1991年3月~10月にかけて加治川に回帰したサクラマス1,076尾のうち888尾を調べ、各群の回帰率を比較した。1. 解析した回帰魚(888尾)の10.70%に当たる95尾が標識魚であった。その内87.4%に当たる83尾は、発眼卵で耳石標識をつけ0+の春(1989年3月)に稚魚で放流した加治川×加治川の系群であった。遡上魚の採捕尾数(1,076)に対する各群の解析尾数の割合で回帰尾数を補正すると、全標識魚数が回帰尾数に占める割合は、10.56%になった。2. 各実験群の補正回帰尾数と(回帰率)は、それぞれ以下のとおりであった。0+春に稚魚で放流した加治川×加治川と河川残留型の二居×二居は101.2尾(0.19%)と0尾(0%)、0+秋に放流したB×魚野川、B×B、加治川×加治川、山形池産×山形池産、および加治川×加治川は、それぞれ5尾(0.05%)、0尾(0%)、0尾(0%)、1.4尾(0.07%)、1尾(0.03%)であった。また、1990年春1+スモルトで河口に放流したB×魚野川の3群各約1,000尾については、4尾(0.4%)、0尾(0%)、1尾(0.1%)で、これら3群まとめると5尾(0.17%)となった。3. いままで効果の不明だった0+春稚魚放流は0.19%と比較的高く、新潟県におけるシロサケ並の回帰率であることが確認された。4. 経済的見地より考えると、回帰率がほぼ同等の0+春稚魚放流群(0.19%)と1+春放流群(0.17%)については、後者より経費、労力がかからない点で前者の方が有効であると考えられた。5. 回帰率を、同じ加治川遡上系で放流時期の違う実験群間で比較すると、0+春放流群(0.19%)の方が、0+秋放流稚魚(0or0.03%)より高い回帰率を示すことが分かった。6. また、同じ0+春放流の加治川遡上系と残留型ヤマメ系の間で比較すると、残留系は全く回帰しなかったので、明らかに後者は前者に劣った。7. さらに、0+秋放流魚の親魚の組み合せの違いを検討してみても、各実験群とも0~0.07%の範囲であり、いずれも低い値で大きな差はないことが分かった。8. 回帰率を、ヤマメ系の放流時期の違いから比較すると、0+秋放流魚より1+春放流の方が回帰が良かった。しかし、これはそもそも回帰魚が各群1~数尾と極めて少ないため明言はできず、今後放流尾数を増やして再検討する必要があると考えられた。9. 年令は、1+魚が全回帰魚の0.4%、2+魚が95.7%、3+魚が3.9%で大半を2+魚が占めた。10. 2+のサクラマスは雌が尾叉長、体重ともに大きかったが、標識魚と無標識のものの間で大きさに差はなかった。11. 回帰魚に占める2+の天然魚と0+春稚魚放流群の2+回帰魚の割合とその放流尾数53,985尾より、1989年春の天然再生産のサクラマス稚魚数を推定すると約49万尾となった。
ISSN:0386-1643