加治川へ耳石標識をして放流したサクラマス幼魚の分布、生長及び食性について

1989年3月~11月に新潟県加治川へ耳石標識とヒレ切除標識を施したサクラマス稚魚、池産系ヤマメを放流してその後15カ月間にわたり分布、移動、生長、食性等に関して調査を行った。同時に採捕される無標識魚の0+、1+年魚の調査も合わせて行った。1. 採捕状況から加治川では、河川の増水期である春には体長の大きいスモルト・パーは瀬・渕等に生息しているが、小型のものやふ上して間もない稚魚は岸辺の植物が繁茂する流れのゆるい水域を生息場所としていた。2. スモルトとなり降海するまで、あまり大きな移動はしないものと推察された。3. 加治川には農業用水取水のための頭首工が設けられており、これらの取水路で稚魚・幼...

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Veröffentlicht in:新潟県内水面水産試験場調査研究報告 1990 (16), p.19-44
Hauptverfasser: 関, 泰夫, 小池, 利通, 塚本, 勝巳, 大矢, 真知子, 星野, 正邦
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:1989年3月~11月に新潟県加治川へ耳石標識とヒレ切除標識を施したサクラマス稚魚、池産系ヤマメを放流してその後15カ月間にわたり分布、移動、生長、食性等に関して調査を行った。同時に採捕される無標識魚の0+、1+年魚の調査も合わせて行った。1. 採捕状況から加治川では、河川の増水期である春には体長の大きいスモルト・パーは瀬・渕等に生息しているが、小型のものやふ上して間もない稚魚は岸辺の植物が繁茂する流れのゆるい水域を生息場所としていた。2. スモルトとなり降海するまで、あまり大きな移動はしないものと推察された。3. 加治川には農業用水取水のための頭首工が設けられており、これらの取水路で稚魚・幼魚が採捕されたことから、取水の目的で設置されている用水路にこれら幼稚魚の迷入のあることが、確認された。4. 上流と下流では、無標識の0+年魚は秋までの生長に差がみられ、下流域で採捕されるものに大きい傾向がみられた。5. 無標識魚0+年魚の3~7月までの生長は大きいものの7~9月は小さく、11月以降スモルトとなる3月までの間の生長は大きいことが推察された。一方、標識魚は無標識魚より放流時は大きいものが放流され、11月までの生長は無標識魚より大きいが、3月のスモルトのサイズでは両者の差はなかった。6. 0+年魚で成熟するものは雄魚であり、それらは生長の大きいものであったが、未成熟魚でも成熟魚より大きいものがあり、成熟には個体差があった。7. 無標識魚のスモルトの降海時期は、3月中旬~4月中旬が盛期と考えられる。スモルトは3月中旬にはすでに上流域に出現しており、スモルトの変態が直ちに降海行動に結びつかないものと考えられた。8. 標識魚の降海は無標識魚より約10日盛期が遅くみられたが、それは放流時期、大きさ、放流場所が異なるため厳密な比較ができなかった。9. 胃内容物からみた餌料としては落下昆虫、水生昆虫主体であるものの、水生昆虫としては、3~7月はユスリカ、カゲロウが多く、9~11月になるとトビケラが多くみられた。しかし、1+年魚となった3月には再びユスリカが多く認められた。このような傾向は3月に放流した群も同様であった。10. スモルト・パーの胃内容物の重量・種類に差はみられなかった。11. 1+年魚の河川の上流域、下流域に生息するものの大きさについては差はみられなかった。スモルトが降海した後に河川に残留するものはほとんど雄魚と推定された。12. パーの河川内での成長は3~6月まで大きいが、6~7月には小さくなり、7月以降はほとんど生長はないようにみられた。
ISSN:0386-1643