近畿大学奈良キャンパスの気象 : 地形と植生のもたらす影響

近畿大学奈良キャンパス(以降、近大と略称)では、1992年から継続的に気象観測が行なわれてきた。しかし、そのデータはほとんど未整理で、測定値の信頼性にも疑問があった。近年、里山修復プロジェクトをはじめ、本キャンパスの自然環境、生物に関する研究が盛んになってきた。そしてそれに伴って、信頼できる気象データの整備が強く望まれていた。そこで、私達は、観測システムを整備点検し、そうして得られた観測値の妥当性を評価検討した。評価、検討に当たっては、近隣の奈良地方気象台(以降、気象台)および五條アメダス観測点(以降、五條アメダス)のデータと比較した。また、このような比較によって、近大の気象環境がどのような特...

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Veröffentlicht in:近畿大学農学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Agriculture of Kinki University 2011-03 (44), p.35-46
Hauptverfasser: 荻野, 直人, 西野, 済, 古根川, 浩之, 高見, 佑, 原薗, 芳信, 高見, 晋一
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:近畿大学奈良キャンパス(以降、近大と略称)では、1992年から継続的に気象観測が行なわれてきた。しかし、そのデータはほとんど未整理で、測定値の信頼性にも疑問があった。近年、里山修復プロジェクトをはじめ、本キャンパスの自然環境、生物に関する研究が盛んになってきた。そしてそれに伴って、信頼できる気象データの整備が強く望まれていた。そこで、私達は、観測システムを整備点検し、そうして得られた観測値の妥当性を評価検討した。評価、検討に当たっては、近隣の奈良地方気象台(以降、気象台)および五條アメダス観測点(以降、五條アメダス)のデータと比較した。また、このような比較によって、近大の気象環境がどのような特徴を持つのかを明らかにしようとした。近大のデータとしては、2007年から2009年の間に観測された気温、降水量、日射量の観測値を用いた。また、これらの観測項目については、同一期間の気象台のデータも用いた。気温については、ほぼ同じ海抜高度に位置する奈良県内の五條アメダスデータの観測値も使った。近大の気温日較差は、盆地平坦部の気象台・五條よりも小さかった。これは近大の最高気温が年間を通して他の2地点よりも低いことと、最低気温が他の2地点を下回らないためであった。それには次のような植生・地形の影響が考えられた。まず、最高気温は植物の蒸散・太陽放射の反射により、他の2地点より低めに抑えられていたと思われる。次に最低気温の方は、丘陵の斜面という立地のため、盆地の平坦部より冷気が溜まりにくくなっていると考えられた。年間積算日射量は、3カ年とも近大の方が気象台より少なかった。通算すると、気象台を100としたとき、近大の日射量は97であった。また、各月とも気象台より近大の方が日射量は少なく、日射計の検定定数に誤差がある可能性が考えられた。年降水量に関しては、気象台との間で一定の違いは見いだせなかった。しかし、5mm以上の降水が観測された日を降水日数とすると、近大は気象台よりやや多く、山地斜面気象の特徴の一つを示す可能性が考えられた。
ISSN:0453-8889