枝肉形質に及ぼす性の効果を考慮し複数形質を対象としたQTL解析

今回、黒毛和種におけるQTL解析において、表現型値の性差の標準化による補正とQTL領域の真偽性を検定する方法を用いることにより、一度に複数形質を対象とする解析が可能かどうかについて、「第7福桜」号を父とする半きょうだい家系(母集団)を対象にQTL解析を試みた。さらに得られたハプロタイプについては、各ハプロタイプを母数効果とした分散分析を実施し、表現型値に及ぼす効果を確認した。解析対象家系の肥育産子227頭(去勢160頭、雌67頭)に対して、複数の枝肉形質を対象としたQTL解析(一次スクリーニング)を行い、得られた領域のうち、枝肉重量またはBMS No.に関する領域について、肥育産子393頭(去...

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Veröffentlicht in:島根県立畜産技術センター研究報告 2010-03 (41), p.11-16
Hauptverfasser: 中村, 亮一, 長谷川, 清寿, 澤, 香代子, 岡崎, 尚之
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:今回、黒毛和種におけるQTL解析において、表現型値の性差の標準化による補正とQTL領域の真偽性を検定する方法を用いることにより、一度に複数形質を対象とする解析が可能かどうかについて、「第7福桜」号を父とする半きょうだい家系(母集団)を対象にQTL解析を試みた。さらに得られたハプロタイプについては、各ハプロタイプを母数効果とした分散分析を実施し、表現型値に及ぼす効果を確認した。解析対象家系の肥育産子227頭(去勢160頭、雌67頭)に対して、複数の枝肉形質を対象としたQTL解析(一次スクリーニング)を行い、得られた領域のうち、枝肉重量またはBMS No.に関する領域について、肥育産子393頭(去勢301頭、雌92頭)を対象とした詳細な解析(二次スクリーニング)を行った。なお、解析対象個体の表現型値は性ごとに標準化し、解析に用いた。その結果、BTA6では枝肉重量に関して有意な領域(P<0.0001)が、BTA15およびBTA25ではBMS No.に関して有意な領域(BTA15:P<0.01、BTA25:P<0.0001)が検出された。一次スクリーニングで得られたQTL領域の偽陽性混入率は0から0.15であった。これらのQTL領域の枝肉重量またはBMS No.に対するハプロタイプ置換効果は、BTA6では27.7kg、BTA15では0.6、BTA25では0.9であった。QTL解析で得られた枝肉重量およびBMS No.に関するハプロタイプの組み合わせが各形質に及ぼす効果を検討した結果、枝肉重量については、去勢ではQ6群がq6群と比べて、有意に大きかった(P<0.0001)が、雌では両群間で、有意な差はなかった。BMS No.については、去勢、雌ともに、BTA15とBTA25のハプロタイプの組み合わせは有意な母数効果となった。多重検定の結果、去勢では、Q15Q25群はq15q25群およびQ15q25群と比べて、有意に高かった(Q15Q25 vs q15q25:P<0.001、Q15Q25 vs Q15q25:P<0.05)。雌においても、Q15Q25群はq15q25群およびq15Q25群と比べて、有意に高かった(P<0.01)。これらのことから、去勢および雌が混在した状態でも、性ごとにデータを標準化して補正することにより、複数の枝肉形質を対象とするQTL解析が行え、各形質について有意な染色体領域を推定できることが明らかになった。さらに、本手法は、複数の形質に関して一度に解析できること、母集団を構成する個体数が少なくてもよいことからQTL解析の効率化を図るために有効であると考えられた。
ISSN:1882-1030