DEAを用いた森林組合の経営効率性分析
近年,森林の公益的機能の見直しや地球温暖化の顕在化にともなって人々の環境意識が高まり特に,森林が持つ二酸化炭素吸収能力が注目を浴び,林業に関する関心が高まっている。また,国際的な木材の需要の高まりから,一部の国産材は相対的に市場競争力を回復しつつあり,結果として自給率も回復基調にある。このように森林・林業をとりまく情勢は近年大きな変化を迎えていて,日本の森林・林業関係者は適切な対応を迫られている。 そこで本研究では森林整備事業の中核を担う森林組合に注目した。都道府県別の森林組合のデータを基に都道府県ごとにDEA (Data Envelopment Analysis)による経営効率性分析を行い,...
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Veröffentlicht in: | 環境科学会誌 2010, Vol.23(2), pp.106-114 |
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Hauptverfasser: | , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Schlagworte: | |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 近年,森林の公益的機能の見直しや地球温暖化の顕在化にともなって人々の環境意識が高まり特に,森林が持つ二酸化炭素吸収能力が注目を浴び,林業に関する関心が高まっている。また,国際的な木材の需要の高まりから,一部の国産材は相対的に市場競争力を回復しつつあり,結果として自給率も回復基調にある。このように森林・林業をとりまく情勢は近年大きな変化を迎えていて,日本の森林・林業関係者は適切な対応を迫られている。 そこで本研究では森林整備事業の中核を担う森林組合に注目した。都道府県別の森林組合のデータを基に都道府県ごとにDEA (Data Envelopment Analysis)による経営効率性分析を行い,得られた経営効率値とヒアリング等によって得た3点((1)森林組合の規模の効率性(2)森林組合の被雇用者の年齢構成(3)森林組合の被雇用者の賃金体系)との関係について重回帰分析を用いて検討した。次に,DEAによって得られた結果より,模範性の高い都道府県の森林組合の活動形態を検討することにより,今後森林組合が目指すべき方向性について検討を行った。 その結果,経営効率値と被雇用者の賃金体系との間に負の関係がみられ,雇用安定性が増すと効率値が下がることが示唆された。また,森林組合の活動形態として本来の業務である林産・販売業務あるいは近年必要性が指摘されている間伐活動に対する重みが高いことが判明した。 今後の課題は,第一に分析対象を個別森林組合レベルの経営データを用いて詳細な分析を行い,効率性の要因を詳しく考察することである。第二に森林整備活動支援交付金制度(2007)に代表されるように森林維持管理を目的に投入されている巨額な補助金の森林経営性に対する影響を検討することである。しかし,上記の2つの課題を明らかにするために必要な情報が現時点では十分に公表されていないことが,大きな制度的課題として存在する。 |
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ISSN: | 0915-0048 1884-5029 |
DOI: | 10.11353/sesj.23.106 |