イネ縞葉枯病・穂いもち抵抗性に関するDNAマーカー選抜育種の体系化

1980年代に着手されたDNA多型連鎖地図の開発は、それまで解析困難とされてきた形質に関する研究を大きく進展させた。同時に、農業上有用な形質と連鎖するDNAマーカー(以下マーカー)を用いた新たな育種法「マーカー選抜(MAS)育種」の可能性を提供した。MAS育種では、目的形質と密接に連鎖するマーカーを育種過程における選抜に用いることにより、検定時期が限定されずに効率よく選抜が実現できる。表現型の観察では遺伝子型を容易に判別しにくい形質の選抜にはMAS育種が特に有効である。また、重要な諸形質と連鎖するマーカーの蓄積により、複数の形質を同じ手法によって、同時にスクリーニング可能となる。このような利点...

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Veröffentlicht in:Ikushugaku kenkyu 2008, Vol.10(4), pp.151-155
1. Verfasser: 愛知県農業総合試験場・北海道農業研究センターイネ病害抵抗性育種グループ(代表, 藤井 潔)
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:1980年代に着手されたDNA多型連鎖地図の開発は、それまで解析困難とされてきた形質に関する研究を大きく進展させた。同時に、農業上有用な形質と連鎖するDNAマーカー(以下マーカー)を用いた新たな育種法「マーカー選抜(MAS)育種」の可能性を提供した。MAS育種では、目的形質と密接に連鎖するマーカーを育種過程における選抜に用いることにより、検定時期が限定されずに効率よく選抜が実現できる。表現型の観察では遺伝子型を容易に判別しにくい形質の選抜にはMAS育種が特に有効である。また、重要な諸形質と連鎖するマーカーの蓄積により、複数の形質を同じ手法によって、同時にスクリーニング可能となる。このような利点から、MAS育種は次世代の育種法として注目されてきた。特に、作物の中でもイネはそのDNA多型連鎖地図を基盤としたゲノム研究が進み、さまざまな形質に関するマーカー開発が開始された。しかし、1990年代には水稲育種においてさえ実用に耐えうるマーカーは限られていた。イネ病害抵抗性遺伝子の識別用マーカーに関しては、抵抗性崩壊が起こりにくく、安定した抵抗性を発現する実用遺伝子の識別マーカーの開発が遅れていた。そこで、われわれの研究グループ(愛知県農業総合試験場(愛知農総試)と独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構北海道農業研究センター(北農研))では、インド型イネ品種「Modan」に由来する、イネ縞葉枯病抵抗性遺伝子Stvb-iおよび穂いもち圃場抵抗性遺伝子Pb1に関する遺伝解析を基盤に、それぞれの抵抗性遺伝子に密接に連鎖し、かつ品種育成に利用できる実用選抜マーカーの開発を進め、これらのマーカーを用いてイネ病害複合抵抗性育種へのMASの適用を図り、その有効性を実証する共同研究を開始した。
ISSN:1344-7629
1348-1290
DOI:10.1270/jsbbr.10.151