中部山岳国立公園とスイス国立公園における山岳生態系保全システムに関する比較研究
中部山岳国立公園は標高3000メートルを越える山々を含む温帯の山岳生態系を代表する自然保護地域である。しかしながら、人間活動の生態系への負荷を軽減する必要性から、適正な山岳生態系保全を行うための新たな公園維持管理のあり方が問われている。2003年4月に施行された改正自然公園法のもとで将来の中部山岳国立公園管理の方向性を模索するため、厳しい自然保護政策を実施し、中央ヨーロッパの脆弱な山岳生態系を長年維持管理しているスイス国立公園で現地調査を行った。両公園の現状、自然環境保全のための法体制ならびに管理運営を比較することによって、今後の中部山岳国立公園における生態系保全のあり方について考察を行った。...
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Veröffentlicht in: | 信州大学農学部紀要 2007-03, Vol.43 (1-2), p.33-42 |
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Hauptverfasser: | , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 中部山岳国立公園は標高3000メートルを越える山々を含む温帯の山岳生態系を代表する自然保護地域である。しかしながら、人間活動の生態系への負荷を軽減する必要性から、適正な山岳生態系保全を行うための新たな公園維持管理のあり方が問われている。2003年4月に施行された改正自然公園法のもとで将来の中部山岳国立公園管理の方向性を模索するため、厳しい自然保護政策を実施し、中央ヨーロッパの脆弱な山岳生態系を長年維持管理しているスイス国立公園で現地調査を行った。両公園の現状、自然環境保全のための法体制ならびに管理運営を比較することによって、今後の中部山岳国立公園における生態系保全のあり方について考察を行った。両公園における単位面積当たりの年間推計利用者数の比較では、中部山岳国立公園はスイス国立公園の約6.5倍であった。また、中部山岳国立公園はスイス国立公園に比べて公園規模が大きく、制度上複雑な土地利用形態と土地所有構造を呈していた。一方、スイス国立公園は園内が全て保護区域に指定されており、土地利用の混在が無く土地所有形態も公有地の借用と購入地のみであった。それら条件の違いが両国立公園における過剰利用の有無ならびに人為的な自然環境の撹乱の度合いに影響を及ぼしていると考察された。また、両公園の間には法体制の相違による異なった公園管理のあり方が存在することが認識された。スイス国立公園は現時点において連邦唯一の国立公園であることから、そのための固有な国立公園法と州法が存在し、自然保護を目的とした公園の運営体制や規則、権限が法で厳格に規定されていた。スイス国立公園法の目的は人間の手を一切加えず自然の復元プロセスに則って山岳生態系を保全することであり、公園はその目的達成のため自然保護、研究、情報提供活動を三つの柱にして管理を行っていた。加えて、スイス国立公園では地元自治体だけでなくNGOや地元住民等と連携しながら公園管理計画を決定してゆく体制が既に整っており、公園地域の恒久的な維持管理に重要な役割を果たしていることが認識された。中部山岳国立公園における山岳生態系保全のためには、現在行っているゾーニングや規制強化に加え、利用者の局所集中を避けるための園内の観光ルート計画など、地域全体を見据えた独自の管理体制を整える必要性が確認された。また、地元住民ならびにNGO等が管理計画策定に合法的に参加できるような法制度整備の重要性が認識された。 |
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ISSN: | 0583-0621 |