農村地域におけるエネルギー転換戦略に影響を与える要因: インドにおけるコミュニティ参画の事例

インドの農村では,現在でも薪や農業廃棄物といったバイオマスが主燃料であり,調理熱源総量の90%を担っています。こういった燃料を集め,作り,使用するのは主として女性や少女たちですが,燃料を効率的に使用しないと,国家経済の損失になるばかりか,大気汚染や健康被害を引き起こす要因にもなります。また,無節操な薪の消費は,森林破壊や砂漠化にもつながるため,大きな懸念材料となっています。このような状況の下で重要となるのは,農村部のエネルギー政策やエネルギー事業として,適切かつ手頃なクリーン・エネルギー・システムを可能とする技術,制度整備,意識喚起,教育スキームです。農村におけるエネルギー事業は,再生可能エネ...

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Veröffentlicht in:農村計画学会誌 2006, Vol.25(1), pp.13-20
Hauptverfasser: Anbumozhi, V, Purushotam, P
Format: Artikel
Sprache:jpn
Schlagworte:
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Beschreibung
Zusammenfassung:インドの農村では,現在でも薪や農業廃棄物といったバイオマスが主燃料であり,調理熱源総量の90%を担っています。こういった燃料を集め,作り,使用するのは主として女性や少女たちですが,燃料を効率的に使用しないと,国家経済の損失になるばかりか,大気汚染や健康被害を引き起こす要因にもなります。また,無節操な薪の消費は,森林破壊や砂漠化にもつながるため,大きな懸念材料となっています。このような状況の下で重要となるのは,農村部のエネルギー政策やエネルギー事業として,適切かつ手頃なクリーン・エネルギー・システムを可能とする技術,制度整備,意識喚起,教育スキームです。農村におけるエネルギー事業は,再生可能エネルギー技術を用いて持続可能な方法で,家庭へのエネルギー供給を増やすことを目的としており,調理や水汲みポンプ,またソーラー・ランプなどの照明器具に使うエネルギー効率の改善に重点が置かれています。プロジェクトの計画や実施には地方分権型の方法が採られています。地域共同体の参加を重視するこのやり方は,エネルギー問題への介入は,住民の全般的な開発優先事項と切り離しては考えられない,という政府方針が基本となっています。また,エネルギー問題や消費傾向はその地方に特有であるため,各地域共同体が相応の戦略を立案する必要があります。このような経緯から村落共同体が,様々なレベルや形態で参加することになりました。政府の助成金を使って国内3ヶ所の後進地区に住む1,200人にソーラー・ランプを支給し,全員と面談する形式でケース・スタディが行なわれました。その結果,ソーラー・ランプのような再生可能なエネルギー技術の普及に関しては,技術に信頼性があること,手頃な商品であること,使用者を決定する際に地域共同体からの協力を得ること,金融機関による貧困者対象の信用貸付支援があること,に,その成否がかかっていることがわかりました。参加を促すリーダー層の形成も必須事項です。地元の男女や技術者の参加を得て,バイオガスやソーラー・ランプの修理・メンテナンスの訓練が行なわれました。また,地域共同体に所有権を譲渡するため,地域共同体からいくばくかの資金を拠出させることとし,相応の分担額について協議しました。バイオガスについては費用の20%以上,ソーラー・ランプについては58%以上を地域共同体が負担し,不足額には政府の助成金を充てることが決定しました。このケース・スタディから見えてきたのは,受益者となる地域共同体を適正に選ぶことで助成金が適正に流れ,従ってその回収戦略も適正となる,ということです。また,利害関係者の役割を明確化することで地域共同体の参加が意味あるものとなり,ひいては農村地域で効率的な燃料や器具の普及が促進されるということを教訓として得ることができました。参加型の取組みをすることで,エネルギーの移行を地域共同体の開発ニーズと一致する方向へ持っていくことができるということがもっとも重要なことでしょう。
ISSN:0912-9731
1881-2309
DOI:10.2750/arp.25.13