施設トマトにおける環境保全型栽培の実証
施設トマト栽培における化学合成農薬・肥料使用量の50%削減を目標とする環境保全型栽培体系を設計し、それを実証するためのプロジェクト研究を実施した。 実証区では、施肥はぼかし肥等を活用した有機質主体施肥とし、病害虫防除には熱水土壌消毒、微生物農薬・天敵等を利用、着果にはマルハナバチを使用し、最低夜温を10℃に設定した。一方、対照区については、化学合成農薬・肥料を主体とした施肥・病害虫防除を行い、着果ホルモン剤を利用し、最低夜温を8℃に設定した。第1作は1998年10月15日、第2及び3作はそれぞれ1999及び2000年の9月17及び14日に播種し、自根及び接ぎ木苗を用いた。育苗管理及びUターン整...
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Veröffentlicht in: | 神奈川県農業総合研究所研究報告 = Bulletin of the Agricultural Research Institute of Kanagawa Prefecture 2002-03 (142), p.17-35 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 施設トマト栽培における化学合成農薬・肥料使用量の50%削減を目標とする環境保全型栽培体系を設計し、それを実証するためのプロジェクト研究を実施した。 実証区では、施肥はぼかし肥等を活用した有機質主体施肥とし、病害虫防除には熱水土壌消毒、微生物農薬・天敵等を利用、着果にはマルハナバチを使用し、最低夜温を10℃に設定した。一方、対照区については、化学合成農薬・肥料を主体とした施肥・病害虫防除を行い、着果ホルモン剤を利用し、最低夜温を8℃に設定した。第1作は1998年10月15日、第2及び3作はそれぞれ1999及び2000年の9月17及び14日に播種し、自根及び接ぎ木苗を用いた。育苗管理及びUターン整枝等の基本的な栽培管理は両区とも同じとした。 実証区では、自根、接ぎ木処理あるいは品種にかかわらず、対照区より多収となった。また、接ぎ木区では生育が自根より7~9日程度おくれた。最低夜温を10℃に設定した実証区では、品種にかかわらず1~2月の厳冬期でも十分な量の花粉が生成したのに対し、同8℃設定にした対照区では花粉生成が顕著に少なくなった。果実に含まれる糖、有機酸、アミノ酸及びビタミンCについて調査したところ、糖度及びグルタミン酸は対照区の方が高くなったが、ビタミンCは実証区の方が高い値を示した。有機酸は試験区間に差は認められなかった。一般パネラーによる食味調査の結果、トマトの食味には甘味、酸味及び果肉の硬さが大きく関与することが明らかになった。実証区では元肥にぼかし肥を用い、生土容積抽出法によるリアルタイム土壌診断による追肥を行うことにより、施肥の3要素すべてで、対照区に比べ化学肥料の使用量を60%以上削減できた。神奈川方式の熱水土壌消毒法による土壌病害抑止効果について検討した結果、深さ70cmにおいても高い殺菌効果が認められ、また、トマトを3連作しても化学薬剤を用いて毎年土壌消毒を行った対照区と同等以上の発病抑止効果が得られた。実証区において生物農薬及び天敵等に影響が少ない化学合成農薬を選び、防除基準に基づいた防除体系を採用することにより、延べ使用薬剤数で50%以上の化学合成農薬の削減が達成された。作業時間及び消費エネルギーともに、施肥作業においては、ぼかし肥作成作業が加わった実証区の方が多くなったが、防除作業及ぴ着果作業については実証区の方が対照区より顕著に少なくなったため、作業全体としては、延べ作業時間及び消費エネルギー量ともに実証区の方が50%以上軽滅された。実証区では、生産物財費は対照区に比べ高くなるが収量が多いため、収益性は少なくとも対照区と同等となった。また、環境保全型農産物として付加価値を高めて販売すれぱ、さらに収益性が高まる可能性が認められた。 以上、環境保全型栽培技術体系の実証試験の結果、化学合成農薬・肥料を50%以上削減しても、これまでの慣行栽培と同等の収量と品質が確保でき、着果及ぴ防除作業時間や労働負荷が大幅に軽減されるとともに、経営的には少なくとも同等となり、有利販売ができるなら同等以上の収益性をあげられる可能性があることが明らかになった。 |
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ISSN: | 0388-8231 |