生殖系列を利用したミトコンドリアの機能解析 : 欠失型ミトコンドリアDNAのマウス個体への導入とその解析
ミトコンドリア内に存在するミトコンドリアDNA(mtDNA)には,酸化的リン酸化によるATP産生に不可欠な呼吸酵素複合体の13種類のサブユニットがコードされている.ミトコンドリア遺伝子疾患はこのmtD-NAの突然変異により引き起こされる疾患であり,脳神経,筋肉,内分泌系など,様々な組織,器官に症状が現れる.更に最近では,mtDNA突然変異と心疾患,糖尿病,アルツハイマー,パーキンソン病などの疾患や老化との関連も示唆されている.mtDNA上に突然変異を持つミトコンドリア遺伝子疾患のモデルマウスを作製することは,この病気の病態を明らかにする上で非常に重要であると考えられるが,核外遺伝子を扱うという...
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Veröffentlicht in: | The Journal of reproduction and development 2000-12, Vol.46, p.87-93 |
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Hauptverfasser: | , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | ミトコンドリア内に存在するミトコンドリアDNA(mtDNA)には,酸化的リン酸化によるATP産生に不可欠な呼吸酵素複合体の13種類のサブユニットがコードされている.ミトコンドリア遺伝子疾患はこのmtD-NAの突然変異により引き起こされる疾患であり,脳神経,筋肉,内分泌系など,様々な組織,器官に症状が現れる.更に最近では,mtDNA突然変異と心疾患,糖尿病,アルツハイマー,パーキンソン病などの疾患や老化との関連も示唆されている.mtDNA上に突然変異を持つミトコンドリア遺伝子疾患のモデルマウスを作製することは,この病気の病態を明らかにする上で非常に重要であると考えられるが,核外遺伝子を扱うという点が障害となり,モデルマウスの作製には有効な手法が存在しなかった.しかしながら最近,大規模欠失突然変異型(欠失型)のmtDNAを有するマウス培養細胞が樹立できたことから,モデルマウス作製への道が開けてきた.我々はこの細胞株を用いて,欠失型mtDNAのマウス胚への導入を試み,その個体内に欠失型mtDNAを有するマウスを作製することに成功した.欠失型mtDNAは母性遺伝し,これを高い割合で有する個体については骨格筋,心筋,腎臓などの組織で異常が認められた.今後,このマウスを用いてミトコンドリア遺伝子疾患の更なる病態解析や治療法の開発が進展すると期待される. |
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ISSN: | 0916-8818 |