重粘土畑地帯におけるバレイショを中心とした輪作体系および高性能省力機械化体系による栽培技術の実証と経営評価
1.バレイショ産地の現状と展開方向 今後のバレイショ生産,あるいはバレイショ作経営の展開方向として,(1)土地基盤整備などの地域的な取り組みに基づく省力・低コスト化生産技術の導入,(2)施設園芸部門との結合,(3)新しい発想による高付加価値型バレイショ生産への取り組み等が上げられる。 このうち,活力あるバレイショ産地への再編成方策として,土地基盤整備圃場など地域的な取り組みに基づく省力・低コスト化生産技術の導入は極めて重要である。 そして,基盤整備後の有効な土地利用や土地利用調整,担い手農家の育成,農家の労働力不足解消のための雇用労働力確保,生産費の低減,省力化と軽作業化,機械利用組合や受委託...
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Veröffentlicht in: | 長崎県総合農林試験場研究報告. 農業部門 2001-03 (27), p.1-80 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 1.バレイショ産地の現状と展開方向 今後のバレイショ生産,あるいはバレイショ作経営の展開方向として,(1)土地基盤整備などの地域的な取り組みに基づく省力・低コスト化生産技術の導入,(2)施設園芸部門との結合,(3)新しい発想による高付加価値型バレイショ生産への取り組み等が上げられる。 このうち,活力あるバレイショ産地への再編成方策として,土地基盤整備圃場など地域的な取り組みに基づく省力・低コスト化生産技術の導入は極めて重要である。 そして,基盤整備後の有効な土地利用や土地利用調整,担い手農家の育成,農家の労働力不足解消のための雇用労働力確保,生産費の低減,省力化と軽作業化,機械利用組合や受委託組織の運営等々を包括したマネージメント機能を有する地域農業システムの構築が課題である。 2.輪作による根菜類の高品質栽培技術 赤黄色重粘畑土壌で,春バレイショと冬ニンジン,また,春バレイショと秋冬ダイコンを組合わせた輪作体系の中に,緑肥としてソルガムを組入れ,各作物の収量・品質等を検討した。 春バレイショ収穫後,ソルガムを作付け,冬ニンジンまたは秋冬ダイコン播種前に,生草で2t/10a程度を鋤込むことを続けると,堆肥施用の場合より,冬ニンジン,秋冬ダイコン及び春バレイショの収量・品質が向上する。 春バレイショと冬ニンジンまたは秋冬ダイコンとの輪作体系で,緑肥を鋤込んだ場合は,各作物に堆肥(腐熟牛糞)を毎年1.5t/10a施用した場合に比べ,春バレイショのそうか病の発生程度が低く抑えられる。 本輪作体系で堆肥施用では土壌pHが上昇するのに対して,緑肥鋤込みでは土壌pHは上昇せず一定水準に保たれる。 春バレイショ収穫後の緑肥栽培は,生長の早いソルガム(品種:グリーンソルゴー)を使用し,地力が中庸な土壌では基肥に窒素成分で5kg/10a施用し,播種量を標準の倍量程度の厚播きにより,40日程度で生草2t/10a程度が得られる。また,肥沃な土壌では,無肥料,標準播種量により,30~40日で生草4t/10a程度が得られた。播種後40日程度のソルガムは水分が多く軟弱であるので,3~4回のロータリ耕で後作に影響ない程度に破砕し,鋤込むことができる。 3.春作バレイショマルチ栽培における芽だし作業の省力化 春バレイショマルチ栽培での芽だし作業の省力化を図るため,スリット入りマルチについて,省力性や適用時期等を検討した。芽だし作業は,慣行の透明マルチ(無孔)では10a当たり5時間57分(2人作業,4回必要)を要したが,スリット入りマルチでは,10a当たり1時間37分(2人での作業時間,1回)で済み,慣行に比べ,約1/4に短縮できた。スリット入りマルチでは,透明マルチより地温上昇効果が低いので,早植(2月上旬植)・早掘(5月下旬掘)では収量が低かったが,遅植えの2月中旬植え,5月末以降の収穫では透明マルチと同等かそれ以上の収量を得ることができる。 4.冬ニンジン栽培における間引き作業の省力化 目皿を使用した播種により,ニンジンの間引き作業の省力化が図られ,その際の目皿サイズは8mmが適当である。なお,重粘土でのニンジンの発芽率の向上には灌水施設が必要となる。 重粘土での冬ニンジンのシードテープを用いた栽培において,種子封入間隔は5cm1粒で行い,播種後切りわら散布と同時に高性能散水方式の灌水チューブで,降雨がない場合は発芽まで2回,計15mm程度を必ず灌水することで,安定した発芽が得られ,間引き作業なしで間引きを行った慣行区とほぼ同程度の品質収量を得ることができる。 5.ダイコン栽培における高性能省力機械化体系 ダイコン播種作業の省力化のためシードテープ播種について検討した。農試開発の2畦同時播種テープシーダーでの播種作業能率は0.45hr/10aで,慣行の手押し式2.6hr/10aに比べ,5~6倍の能率であった。また,シードテープでの生育・収量については,発芽は良好でほとんど欠株なく,多収となる。 6.バレイショの高性能省力機械化体系 重粘土畑の基盤整備圃場における春バレイショマルチ栽培は,半自動バレイショプランタ,乗用管理機,自走式バレイショハーベスタ等の高性能農業機械を用いることにより,作業時間は10a当たり約45時間と,慣行の約70%に省力化でき,軽作業化も可能となる。 7.ニンジンの高性能省力機械化体系 重粘土畑の基盤整備圃場における冬ニンジン栽培は,長崎農試型テープシーダーや乗用管理機,自走式ニンジンハーベスタ等の高性能農業機械を用いることにより,作業時間は10a当たり約43時間と,慣行の約40%に省力化でき,軽作業化も可能となる。 8.重粘土畑基盤整備地域での高性能省力機械化体系の経営評価 春バレイショ,冬ニンジン,秋冬ダイコンへの高性能省力機械化体系の導入により,10a当たりのべ労働時間は慣行に比べ12~62%減少し,また,着座作業への作業姿勢改善,重量物運搬からの解放,種苗費の減少などの効果が期待できる。ただし,効率的かつ機能的で低コストな機械の共同利用や,共同機械選別施設の整備にあわせて取り組むことが必要である。 9.重粘土畑基盤整備地域での高性能省力機械化体系を導入した営農モデルの策定 春バレイショを中心とする輪作体系に,高性能省力機械化体系を導入した経営規模5ha及び3haの営農モデルを策定した。機械の共同利用によるコスト低減や,労働ピークである5~6月,10~12月の雇用労働力確保の実現により,経営規模5haモデルでは,農業所得1,300万円,労働時間5,700時間,経営規模3haモデルでは,農業所得730万円,労働時間3,400時間が可能となる。 |
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ISSN: | 0388-8398 |