家蚕精子の生殖能力に及ぼす雄蛹及び蛾の長期冷蔵の影響

「ひたち×にしき」と第2白卵系統の2系統を供試し, 人工授精法を利用して蚕の雄蛹及び蛾の長期冷蔵による影響について検討し, 次の諸点を明らかにした。 1. 雄蛾を5℃に10日間冷蔵しても, 生存率, 産卵数及び受精卵率ともに冷蔵の影響はみられず, 採取した精液による人工授精でも同様な産卵性がみられた。 2. 雄蛾を2カ月間冷蔵すると生存率は著しく低下し, 交尾は不能になった。しかし, 生存蛾からの精子による人工授精では, 産卵数及び受精卵率とも無冷蔵・通常交尾と差が認められなかった。 3. 羽化前日の蛹を5℃に10日間冷蔵しても生存率, 産卵数及び受精卵率とも冷蔵の影響はみられず, 蛹からの精液による人工授精でも同様な産卵性がみられた。2カ月間冷蔵すると生存率低下は著しく, 全く羽化できなかった。しかし, 生存蛹からの精子による人工授精では, 産卵数及び受精卵率とも無冷蔵・通常交尾と差が認められなかった。 4. 蛹の精巣から採取した精子による人工授精では, 受精卵が得られなかった。 5. 雌蛹を50℃に10日間冷蔵すると受精卵が減少し, 受精卵率も低下した。 6. 2種の精子を等量・均一に混合して人工授精すると, 精子間で拮抗的な受精競争が起こることが分かった。また, この方法で「ひたち×にしき」の受精能力が第2白卵系統に優ること, 雄蛾の5℃・2カ月間冷蔵は精子の受精能力を低下させることが明らかとなった。