イチゴ新品種「TC-4」の育成経過と特性

千葉県のイチゴの生産振興を図るため，うどんこ病，炭そ病に抵抗性を持ち，花芽分化が早く，大果で収量性が高い促成栽培用品種の育成を行った。1. 1987年に｢とよのか｣と｢千鶴｣の交配系統から早生で，果実の品質が良く，うどんこ病，炭そ病に強い6系統を選抜し，1988年から1990年に特性検定及び生産力検定を繰り返して優良と認められた1系統に｢TC-4｣の系統名をつけた。2. ｢TC-4｣の草姿は半立性で，草高は｢女峰｣に比べ低く｢とよのか｣より高い。草勢は旺盛でランナーの発生はよい。3. 根は｢とよのか｣に似て，1次根が太くて多く，細根がやや少ない。4. 平地仮植育苗における花芽分化時期は9月20日頃で｢女峰｣とほぼ同時期となる。5. 開花期は10月下旬保温開始の促成栽培では，11月中旬で｢女峰｣，｢とよのか｣と同時期であるが，成熟日数は42日程度で｢女峰｣に比べ2～3日長い。6. 花数は頂花房で10～12花，腋花房で7～9花と｢女峰｣に比べ少ない。7. 果形は｢とよのか｣に似た豊円錐形の大果で，変形果や6g未満の小果の発生は少ない。果皮色は｢千鶴｣に似た鮮紅色で着色は良く，色むら果の発生は少ない。8. 全糖含量6.21%，クエン酸含量0.36%で，糖酸比は17.3と｢女峰｣より高く，桃果実に似た香りとさわやかな酸味があり食味は良好である。9. 果実の硬さは｢女峰｣より軟らかく，｢とよのか｣と同程度である。10. 収量性は高く，上物収量，15g以上の大果収量では｢女峰｣を上回る。11. うどんこ病に対しては｢女峰｣，｢とよのか｣より強く，炭そ病に対しては｢女峰｣より強く，圃場抵抗性を持つ。12. ｢TC-4｣は県内の促成栽培に適応できるほか，直売や，イチゴ摘みなどの観光用としても有望と思われる。