酵母のプロトプラスト化におけるアルカリ性プロテアーゼの役割

酵母細胞からアルカリ不溶のグルカン画分 (AIF), アルカリ可溶の糖蛋白質画分 (ASF), マンナン,抗原性蛋白質の各細胞壁成分をそれぞれ単離し, pH 5.0~9.0の緩衝液を用い,それぞれの標品のZymolyaseに対する感受性について検討した. AIFのZymolyaseによる溶解率は酸性-中性領域で最も高く,アルカリ性側で急速に低下した.溶解の至適pHは6.5~7.0であった.ASFのZymolyaseによる溶解は中性-アルカリ性側で起こり, pH 5.4以下では全く溶解されなかった.溶解の至適 pHは8.6であった.同様に,アルカリ性側でASFはZymolyaseによって低分子化...

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Veröffentlicht in:Nippon nōgei kagakukaishi 1986, Vol.60(2), pp.97-103
Hauptverfasser: 玉井, 洋一, 矢島, 麗嘉, 高蔵, 晃, 高桑, 正義
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:酵母細胞からアルカリ不溶のグルカン画分 (AIF), アルカリ可溶の糖蛋白質画分 (ASF), マンナン,抗原性蛋白質の各細胞壁成分をそれぞれ単離し, pH 5.0~9.0の緩衝液を用い,それぞれの標品のZymolyaseに対する感受性について検討した. AIFのZymolyaseによる溶解率は酸性-中性領域で最も高く,アルカリ性側で急速に低下した.溶解の至適pHは6.5~7.0であった.ASFのZymolyaseによる溶解は中性-アルカリ性側で起こり, pH 5.4以下では全く溶解されなかった.溶解の至適 pHは8.6であった.同様に,アルカリ性側でASFはZymolyaseによって低分子化した.マンナンはZymolyaseによって分解されなかった.酵母細胞壁の主要抗原性蛋白質の一つであるTLAaはpH 5.0~9.0の広領域において約20%程度の分解を受けたが,分解におけるpH依存性は認められなかった.一方, TLAbはpH 5.0~9.0の領域においてほとんど分解されなかった.トリプシン分解に対してもTLAbは抵抗性を示した. ASFが溶解されないpH (pH 5.4以下)で酵母細胞をZymolyase消化した場合,反応液の吸光度が半分に低下した段階で一定値となり,細胞は浸透圧による破壊を受けなかったのに対し,中性-アルカリ性側では反応の進行とともに吸光度の低下が続き,細胞は低張破壊を受けた. ASFの溶解が起こらないpH 4.8~5.0でプロトプラストを培養した場合,TLAaとTLAbは培地中に遊離しなかったのに対し, ASFが溶解されるpH 6.6~6.8で培養した場合,両蛋白質が培地中に遊離した. 上記の結果から,酵母細胞壁最内層部を構築するASFがZymolyase標品中のアルカリ性プロテアーゼの細胞壁における本来の作用基質であり,このASFの溶解が酵母細胞のプロトプラスト化に重要であると結論した.
ISSN:0002-1407
1883-6844
DOI:10.1271/nogeikagaku1924.60.97