O-1-G17 副腎皮質機能低下症が疑われた重症心身障害者の男性例

重症心身障害者(以下、重症者)の加齢に伴う活動性低下は、退行によるものと安易に診断されることが決して少なくないと思われる。今回われわれは、運動機能の悪化の要因として副腎皮質機能低下症が疑われた1例を経験したので報告する。症例55歳、男性現病歴元々、四つ這いや介助歩行にて移動する程度の運動機能であった。X−2年11月、自力移動を行わなくなった。軽度の低Na血症と炎症反応以外、明らかな異常所見を認めなかった。リウマチ性多発筋痛症の可能性を疑い、診断的治療目的にプレドニゾロンを投与したところ移動能力は数日で改善した。しかし炎症反応の陰性化がみられず、ステロイドはX−1年10月に中止とした。以後、徐々...

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Veröffentlicht in:日本重症心身障害学会誌 2015, Vol.40(2), pp.222-222
Hauptverfasser: 櫻井, 篤志, 増田, 俊和, 金子, 広司
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:重症心身障害者(以下、重症者)の加齢に伴う活動性低下は、退行によるものと安易に診断されることが決して少なくないと思われる。今回われわれは、運動機能の悪化の要因として副腎皮質機能低下症が疑われた1例を経験したので報告する。症例55歳、男性現病歴元々、四つ這いや介助歩行にて移動する程度の運動機能であった。X−2年11月、自力移動を行わなくなった。軽度の低Na血症と炎症反応以外、明らかな異常所見を認めなかった。リウマチ性多発筋痛症の可能性を疑い、診断的治療目的にプレドニゾロンを投与したところ移動能力は数日で改善した。しかし炎症反応の陰性化がみられず、ステロイドはX−1年10月に中止とした。以後、徐々に活動性が低下、同年12月には移動に全介助を要する状態になった。身体所見(X年2月)眼瞼結膜貧血様。胸腹部に特記事項。口腔内を含め、病的色素沈着。右上肢優位の痙性四肢麻痺。検査所見コルチゾールは早朝空腹時に9.8 μg/dl、迅速ACTH負荷試験の頂値で19.8 μg/dlと副腎皮質機能低下が疑われた。ACTH、レニン活性、アルドステロンは基準値内であり、続発性機能低下と考えた。CRH負荷試験にてコルチゾールは低反応、ACTHも頂値が前値の1.5倍未満であった。他の下垂体ホルモン産生は保たれており、ACTH単独の分泌低下が疑われた。経過ヒドロコルチゾン内服をX年3月から開始した。1週間ほどで四つ這い移動するようになり、その後、歩行器での移動も介助にて可能となった。考察副腎皮質機能低下症による症状は非特異的なものが多く、血中コルチゾールが基準値内だけでは本症を否定できない。本疾患はホルモン補充により症状の改善が期待できることから、活動性低下を示す症例では積極的にその存在を疑うべきである。日常生活動作の低下を呈するようになった重症者では、その原因として本症にかぎらず治療可能な疾患を検索することが重要である。
ISSN:1343-1439
2433-7307
DOI:10.24635/jsmid.40.2_222_1