慢性めまい治療の手札を増やす: 前庭リハの選択と認知療法の導入

薬物のみでは治療に抵抗し, 症状が遷延する慢性めまい患者には前庭リハビリテーション (以下, 前庭リハ) の治療導入が推奨される. めまいの主な原因である前庭障害の回復には小脳の中枢代償 (〓前庭代償) が重要な役割を果たし, この代償は前庭リハによって促進される. 効率のよい前庭リハの選択法は確立していないが, 前庭系, 眼運動系, 体性感覚系の3つを有効に刺激することでもたらされる. よって, 米国における前庭リハの基本的考えである下記 a~c a. めまい症状を起こしやすい動作を繰り返すことで症状を軽減する馴化訓練 b. 前庭動眼反射を用いた適応訓練 c. 視覚と体性感覚を用いた代用,...

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Veröffentlicht in:日本耳鼻咽喉科学会会報 2021/02/20, Vol.124(2), pp.86-94
1. Verfasser: 新井, 基洋
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:薬物のみでは治療に抵抗し, 症状が遷延する慢性めまい患者には前庭リハビリテーション (以下, 前庭リハ) の治療導入が推奨される. めまいの主な原因である前庭障害の回復には小脳の中枢代償 (〓前庭代償) が重要な役割を果たし, この代償は前庭リハによって促進される. 効率のよい前庭リハの選択法は確立していないが, 前庭系, 眼運動系, 体性感覚系の3つを有効に刺激することでもたらされる. よって, 米国における前庭リハの基本的考えである下記 a~c a. めまい症状を起こしやすい動作を繰り返すことで症状を軽減する馴化訓練 b. 前庭動眼反射を用いた適応訓練 c. 視覚と体性感覚を用いた代用, 機能補充訓練を元に以下の疾患に関する前庭リハ選択を行った. ただし, 過去の前庭リハ総説 (日耳鼻 2017; 120: 1401-1409と2020; 123: 307-314) で詳細に紹介した訓練内容は重複を回避するために割愛した. A. めまい発症にストレス関与が高くない (1) 一側前庭障害代償不全, (2) 加齢性めまいと高齢者平衡障害, (3) 良性発作性頭位めまい症. B. めまい発症にストレス関与が高い (4) メニエール病, (5) 前庭性片頭痛, (6) 持続性知覚性姿勢誘発めまい. 女性はストレスが多く, 男性よりもめまいに罹患する割合が多い. めまいが遷延すると不安やうつ状態を併存し, 認知の歪みが患者に生じることを臨床上で多く経験する. その場合には前庭リハと並行して認知療法も治療の手札に加えてほしい. 最近, 前庭機能低下患者は両側海馬萎縮, 空間記憶低下を認め, 前庭が認知に関与している報告を多数認める. 高齢めまい患者を前庭リハで制御することは要介護, 認知症予防の一貫になることも期待されている. 高齢めまい患者には全身の問題点を明確化し, 残存機能を考えて各個人に最適な前庭リハを提供することが治療効率を上げることになる. われわれ, 耳鼻咽喉科医は患者を親身になって元気づけ, 患者自身による前庭リハが継続できるような指導を求められている.
ISSN:0030-6622
1883-0854
DOI:10.3950/jibiinkoka.124.86