ヒト耳小骨靱帯の硬化性病変に関する側頭骨病理組織学的研究
中耳炎による伝音難聴に対し聴力改善手術を行っても聴力の改善が不十分なことがあり, 原因として中耳伝音系の硬化性病変による可能性が考えられる. 今回, 中耳の炎症と中耳伝音系, 特に耳小骨靱帯の硬化性変化との関係について明らかにするため, ヒト側頭骨病理標本を用いて検討した. 対象は当教室で作製したヒト側頭骨病理標本中, 血液疾患, 側頭骨腫瘍, 奇形, 真珠腫性中耳炎を除いた636耳. 側頭骨を採取後, 厚さ25μの水平断連続切片標本を作製し, 10枚ごとにHE染色を施し, 光学顕微鏡にて観察した. 炎症病期は非炎症群, 急性炎症群, 亜急性炎症群, 慢性炎症群と分類し, 前ツチ骨靱帯, 後キ...
Gespeichert in:
Veröffentlicht in: | 日本耳鼻咽喉科学会会報 2003, Vol.106 (7), p.739-749 |
---|---|
Hauptverfasser: | , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | eng ; jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
Tags: |
Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
|
Zusammenfassung: | 中耳炎による伝音難聴に対し聴力改善手術を行っても聴力の改善が不十分なことがあり, 原因として中耳伝音系の硬化性病変による可能性が考えられる. 今回, 中耳の炎症と中耳伝音系, 特に耳小骨靱帯の硬化性変化との関係について明らかにするため, ヒト側頭骨病理標本を用いて検討した. 対象は当教室で作製したヒト側頭骨病理標本中, 血液疾患, 側頭骨腫瘍, 奇形, 真珠腫性中耳炎を除いた636耳. 側頭骨を採取後, 厚さ25μの水平断連続切片標本を作製し, 10枚ごとにHE染色を施し, 光学顕微鏡にて観察した. 炎症病期は非炎症群, 急性炎症群, 亜急性炎症群, 慢性炎症群と分類し, 前ツチ骨靱帯, 後キヌタ骨靱帯, 輪状靭帯のヒアリン変性, 石灰化を観察した. 急性炎症群, 亜急性炎症群は少数のため除外した. 結果, 前ツチ骨靱帯, 後キヌタ骨靱帯は, 非炎症群では加齢により硬化性変化が増加し, 30歳未満と30歳以上の間で有意差を認めた. 慢性炎症群では非炎症群より硬化性変化が強く, 年代間に有意差を認めなかった. 輪状靱帯は, 非炎症群, 慢性炎症群のいずれも前ツチ骨靱帯, 後キヌタ骨靱帯より硬化性変化は少なかったが, 各年代間で有意差を認めなかった. また, 非炎症群と慢性炎症群の比較では, 一部を除きほとんど有意差を認めなかった. 前ツチ骨靱帯, 後キヌタ骨靱帯は, 炎症の影響が加齢の影響よりも強く, 炎症が起きると加齢と関係なく硬化性変化が進行するが, 輪状靱帯は, 加齢や炎症の影響を受けにくいと考えられた. |
---|---|
ISSN: | 0030-6622 |
DOI: | 10.3950/jibiinkoka.106.739 |