X線造影性を有する歯内治療実習用の単根性不完全分岐根管上顎第一小臼歯試作模型 : 歯の解剖形態とマイクロCT観察

ヒトの上顎第一小臼歯の典型的な解剖学的形態は,頬側と舌側(口蓋側)の2本の異なる歯根からなり各歯根は単一根管を有しており,低頻度ではあるが,幅広い単根性で2根管性の同一根尖孔で終わる不完全分岐根管を有することもある.また上顎小臼歯ではときどき頬側2根と舌側1根からなる3根管性もありうる.本研究では,株式会社ニッシンの協力を得て,歯根中央で2根管分岐し1根尖孔で終わる,歯内治療実習用のX線造形性を付与した上顎第一小臼歯人工歯根管模型が新しく試作された.人工歯はビスフェノールAジグリセリド・エーテル(DGEBA)とX線造形性を有するガラスフィラーやその他から作られている.本研究の目的は,これらの人...

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Veröffentlicht in:日本歯科保存学雑誌 2007/10/31, Vol.50(5), pp.630-638
Hauptverfasser: 川崎, 孝一, 森, 拓也, 佐藤, 友則, 井野場, 朗子, 五味渕, 美加, 北島, 佳代子, 江面, 晃, 五十嵐, 勝, 岩城, 重次
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:ヒトの上顎第一小臼歯の典型的な解剖学的形態は,頬側と舌側(口蓋側)の2本の異なる歯根からなり各歯根は単一根管を有しており,低頻度ではあるが,幅広い単根性で2根管性の同一根尖孔で終わる不完全分岐根管を有することもある.また上顎小臼歯ではときどき頬側2根と舌側1根からなる3根管性もありうる.本研究では,株式会社ニッシンの協力を得て,歯根中央で2根管分岐し1根尖孔で終わる,歯内治療実習用のX線造形性を付与した上顎第一小臼歯人工歯根管模型が新しく試作された.人工歯はビスフェノールAジグリセリド・エーテル(DGEBA)とX線造形性を有するガラスフィラーやその他から作られている.本研究の目的は,これらの人工歯と根管の解剖学的形態を調べることであった.歯冠の近心辺縁隆線部には介在結節(辺縁結節)が位置していた.歯根は歯の頬側面観と舌側面観においてゆるやかな銃剣状のいわゆる"S字状"の湾曲がみられた.歯根の隣接面観は根尖の先細り型を示した.髄室の長さはこれらの歯において広がっていた.近遠心方向からみたX線写真では,以下のことが明らかであった. 1.頬舌方向に広がる大きな髄室 2.2つの髄室角の存在 3.歯根中央部で2本の平行する分岐根管と単一根尖孔を有する単根歯 4.舌側根管の強い頬側湾曲 マイクロCTでは,歯根の3つの水平断で以下のことが明らかであった.1.歯頭部:髄室は頬舌的に大きく広がっていた. 2.歯根中央部:根管は軽度の卵円形を示した. 3.根尖1/3部:根管は長い卵円形であったが,根尖部根管の形態は卵円形または円形に移行する傾向があった.歯の長さの計測では,平均(mm)で全長は22.84mm,歯冠の長さは9.42mm,歯根の長さは13.42mm,歯冠の近遠心径は8.11mmおよび歯冠の頬舌径は10.06mmであった.その平均値は藤田の報告よりも少し長かったが,日本人の歯とほぼ近いものであった.歯根の横断では,歯根中央1/3の頬側と舌側根管は頬舌的にひれ状の突起をもつ広い卵円形を示した.頬側根管の幅径は,根管分岐下部では近遠心径よりも頬舌径が2.05>0.95mmと大きく,根尖1/3で1.51>0.74mm,同様に根尖の単一根管部で0.63>0.36mmであった.舌側根管においては,根管分岐下部では頬舌径1.70>近遠心径は0.97mm,同様に根尖1/3では1.48>0.87mmであった.根管壁の厚径は,隣接面の根面溝のある近心部がより薄くなる傾向があった.本人工歯模型は,天然歯と同様な適度なX線濃度を示した.本成績は,臨床実習前の歯内治療のための教育模型の一つとしての可能性を示唆していた.
ISSN:0387-2343
2188-0808
DOI:10.11471/shikahozon.50.630