認知症を生きる

「抄録」認知症の人を生きにくくさせている理由のひとつとして「恍惚の人」的認知症観に注目し, 認知症になりゆく経過を“心理社会的病理”としてとらえた. 認知症になりゆくことは, 不安のなかで孤独を強いられ身近な者からの温かい関与が少なくなることである. 一方家人からの励ましや注意などの指摘は続き, 認知症の人は「叱られる」と受け止める. 役割や立場を失い, 居場所も追われ, 尊厳さえも失いやすい. 叱られ続けるなかで不安・緊張が強まり, 周囲のささいな言動を契機にBPSD(behavioral and psychological symptoms of dementia)へとつながっていく. こ...

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Veröffentlicht in:老年社会科学 2010, Vol.32 (1), p.70-76
1. Verfasser: 高橋幸男
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:「抄録」認知症の人を生きにくくさせている理由のひとつとして「恍惚の人」的認知症観に注目し, 認知症になりゆく経過を“心理社会的病理”としてとらえた. 認知症になりゆくことは, 不安のなかで孤独を強いられ身近な者からの温かい関与が少なくなることである. 一方家人からの励ましや注意などの指摘は続き, 認知症の人は「叱られる」と受け止める. 役割や立場を失い, 居場所も追われ, 尊厳さえも失いやすい. 叱られ続けるなかで不安・緊張が強まり, 周囲のささいな言動を契機にBPSD(behavioral and psychological symptoms of dementia)へとつながっていく. この過程で家族介護者も疲弊しうつ状態になりやすく, それがまたBPSDを悪化させるという悪循環に陥る. 認知症を生きるためには, 認知症の人の不自由を受け入れ, 孤立させず話しかけ, 指摘を少なくする手立てを講ずることが肝要になる. 認知症の早い時期での心理教育が本人, 家族にとって重要である.
ISSN:0388-2446