ドセタキセル投与でRecall現象が発現した1症例

「緒言」Recall現象とは, 抗悪性腫瘍剤の血管外漏出による局所障害が消失した症例に, その薬剤を別の部位から再投与した場合, 以前の漏出部位に腫脹, 紅斑, 硬結, 壊死, 色素沈着等が発現する現象で, パクリタキセルにおいて報告1-3)されている. 一方, パクリタキセルと同様のタキサン環を有するドセタキセルでは, Radiation Recall現象は報告4, 5)されているものの, ドセタキセル再投与によるRecall現象の報告はない. 本報では, ドセタキセルの再投与によりRecall現象が発現した1例について報告する. 症例 症例は, 体重62kg, 68歳の女性, 甲状腺腫手術...

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Veröffentlicht in:病院薬学 2000/12/10, Vol.26(6), pp.642-646
Hauptverfasser: 八重, 徹司, 田中, 弓子, 八重, 恵美子, 木下, 志保里, 別府, 聡子, 嘉村, 基樹, 酒匂, 啓吾, 木村, 正美, 上村, 邦紀
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:「緒言」Recall現象とは, 抗悪性腫瘍剤の血管外漏出による局所障害が消失した症例に, その薬剤を別の部位から再投与した場合, 以前の漏出部位に腫脹, 紅斑, 硬結, 壊死, 色素沈着等が発現する現象で, パクリタキセルにおいて報告1-3)されている. 一方, パクリタキセルと同様のタキサン環を有するドセタキセルでは, Radiation Recall現象は報告4, 5)されているものの, ドセタキセル再投与によるRecall現象の報告はない. 本報では, ドセタキセルの再投与によりRecall現象が発現した1例について報告する. 症例 症例は, 体重62kg, 68歳の女性, 甲状腺腫手術(平成3年), 原発性肺癌にて左肺上葉手術(平成5年), リンパ節転移にて左頚部リンパ節摘出術(平成7年)を受けている. 今回, 肺癌再発(癌性リンパ管症)にてドセタキセル投与となった. ドセタキセルは1回10mgを毎週1回投与した. 9回目の投与を左手首静脈から実施したところ, ドセタキセルが末梢静脈注射部位から血管外に少量漏出し, 左手首の軽い腫脹と注射部位の痛みを認めたが, 熱感, 発赤, 腫脹部位の痛みは認めなかった(図1). 血管外漏出時の皮膚症状に対し, 硫酸ゲンタマイシン含有の吉草酸ベタメタゾンクリームの塗布とアクリノール湿布を実施し, 症状は3日で消失した. 漏出時の症状が軽度であったこと, また本人の同意も得られたことから治療を優先し, ドセタキセル10回目の投与を, 漏出の7日後に右手肘前部静脈から血管外に漏出することなく実施した. 再投与の15時間目あたりから, 以前に血管外漏出した部位である左手首から手の甲にかけて発赤, 熱感の訴えがあり, 24時間後には症状はさらに増強し, 発赤と熱感に加え腫脹, ピリピリとした痛みが出現(図1,2), 前回の血管外漏出時よりも症状の程度は強く, しかも広範囲であった.
ISSN:0389-9098
2185-9477
DOI:10.5649/jjphcs1975.26.642