1.(担当医の立場から)死体腎提供患者に関わった脳外科医の思い-脳外科医にストレスのないシステムの構築を目指して
脳死, 臓器移植法案施行より9年が経過した今, 日本では脳死, 臓器移植に関わった臓器提供者は47例に過ぎない. 生体間の移植や, 以前よりの死体からの腎臓, 角膜移植も行われているが, 症例は多くない, 移植に関する様々な問題も指摘されている. 今回我々は, 死体腎提供患者を受け持つ機会を得たので, 症例報告を行い, その問題点と脳外科医の本音を述べる. 症例は60歳, 男性. 2006年8月23日, 意識障害で発症した超重症くも膜下出血患者で, 救急外来で脳ヘルニアとなり, 自発呼吸停止, 蘇生を必要とした. ICU入室し, 全身管理を行った. 主治医は臨床的脳死に近い状態と判断, 家族と...
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Veröffentlicht in: | THE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL 2007, Vol.57 (1), p.112-112 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 脳死, 臓器移植法案施行より9年が経過した今, 日本では脳死, 臓器移植に関わった臓器提供者は47例に過ぎない. 生体間の移植や, 以前よりの死体からの腎臓, 角膜移植も行われているが, 症例は多くない, 移植に関する様々な問題も指摘されている. 今回我々は, 死体腎提供患者を受け持つ機会を得たので, 症例報告を行い, その問題点と脳外科医の本音を述べる. 症例は60歳, 男性. 2006年8月23日, 意識障害で発症した超重症くも膜下出血患者で, 救急外来で脳ヘルニアとなり, 自発呼吸停止, 蘇生を必要とした. ICU入室し, 全身管理を行った. 主治医は臨床的脳死に近い状態と判断, 家族と話をすると, 妻より自発的に, 本人が臓器提供の意思を常々語っていた, との話があった. ドナーカードが確認できなかったため, 心臓停止後の腎臓提供で話が進んだ. 治療の甲斐なく発症3日後の8月26日, 死亡確認. その後, 腎臓摘出が行われた. 今回の問題点として, コーディネーターのコーディネートが不完全で主治医として安心して任せられない事, 死体腎移植では法律の明確な規定がなく主治医の判断が非難にさらされる可能性がある事, その判断の中で特に腎臓保護の目的で出血性疾患にヘパリンを使用する事, 当院でのマニュアルが無く主治医および脳神経外科主任の最終判断が求められた事, などを感じた. 脳外科医としてはリスクばかり増えてしまうので出来れば関わりたくない, という心情が全く起こらないとは言い難い. 脳外科医の移植への意識が低い事が, 移植が進まない原因の1つ, という議論があるが, 中心的な原因ではなく, 脳死に関する社会的合意の問題が中心と考える. 脳外科医の意識に関しては, 病院の(脳外科医への保護も目的の1つとする)きちんとしたシステム(主治医は臨床的脳死判断を行い, あとは治療に専念;主治医がコーディネーターに連絡しさえすれば, 移植関連は主治医の関与の範囲外できちんと進んでいくようなシステム)が構築されれば, また, 出来れば国の法規定が行われれば, 脳外科医へのストレスが少なくなり, 移植医療推進に多少の影響を及ぼすのではないかと考える. |
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ISSN: | 1343-2826 |