3.ヒト膵臓癌細胞の腹膜転移と相関した生物学的性質と遺伝子発現の変化
【研究の背景と目的】膵臓癌の治療成績は不良であり, その原因は, 局所浸潤, 肝転移及び腹膜播種の制御が困難なためである. 近年, 分子生物学の発展により各種腫瘍の転移のメカニズム及び転移に関与する分子が同定されつつあるが, 膵臓癌では, これらの分子の解明は十分ではなく, 確実な治療法は確立していない. そこで, 膵臓癌の転移, 浸潤に関与する分子を同定し, 新たな治療戦略を確立することを目的とした. 【方法と結果】教室で樹立したヒト膵臓癌細胞株YAPCと, YAPCから単離した高腹膜転移株YAPC-PDを用いた. ヌードマウスの腹腔内に注入すると, YAPC-PDは, YAPCに比して,...
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Veröffentlicht in: | THE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL 2007, Vol.57 (1), p.77-78 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 【研究の背景と目的】膵臓癌の治療成績は不良であり, その原因は, 局所浸潤, 肝転移及び腹膜播種の制御が困難なためである. 近年, 分子生物学の発展により各種腫瘍の転移のメカニズム及び転移に関与する分子が同定されつつあるが, 膵臓癌では, これらの分子の解明は十分ではなく, 確実な治療法は確立していない. そこで, 膵臓癌の転移, 浸潤に関与する分子を同定し, 新たな治療戦略を確立することを目的とした. 【方法と結果】教室で樹立したヒト膵臓癌細胞株YAPCと, YAPCから単離した高腹膜転移株YAPC-PDを用いた. ヌードマウスの腹腔内に注入すると, YAPC-PDは, YAPCに比して, 早期に腹水が貯留し始め, 平均35日で死亡し, 生存期間に有意な差を認めた. YAPC-PDとYAPCの間に, in vitroの増殖速度, 接着能, 運動能及び浸潤能の差がなかったのに対して, ヌードマウス皮下腫瘍での腫瘍増殖速度は, YAPC-PDがYAPCに比して有意に速かった. cDNAマイクロアレイ法でYAPC-PDとYAPCにおける14,000遺伝子の発現を解析した. その結果, 33種類の遺伝子が, 2.5倍以上の発現変動を示した. YAPC-PDで, CD44, S100 protein familyの分子などの発現が増加していた. 一方, NK4, CD74などの免疫系に関与する分子の発現が低下していた. 【考察と今後の展開】以上の結果から, YAPC-PDとYAPCと間では, 増殖能, 免疫原性, 癌細胞と周囲の環境との関係を制御する分子などの発現に変化があり, 腹膜転移能が変化していることが予想される. cDNAマイクロアレイ法で発現に差がある遺伝子について, real-time RT-PCR法, 免疫組織化学染色法を用いて, ヒト膵臓癌細胞株および臨床検体での発現を解析している. さらに機能解析を加え, 新たな標的分子を用いた治療法の開発を目指す. |
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ISSN: | 1343-2826 |