3.皮膚における抗菌ペプチドの発現部位と発現細胞の検討

表皮角化細胞は自然免疫機構として重要なデフェンシンなどの抗菌ペプチドを産生する. 抗菌ペプチドは抗菌活性のほかにケモカインとしての作用を有しており, 感染症病変以外の炎症性皮膚疾患でも発現が亢進していることが知られている. 我々は免疫染色法により尋常性乾癬病変部で正常皮膚やアトピー性皮膚炎病変にくらべHBD-2発現は明らかに亢進していることを確認した. 免疫染色の結果から, 発現部位は有棘層では角化細胞の細胞質に染色が認められた. しかし, 角層では染色はbasket weave patternとなりHBD-2の局在が角層で細胞質から細胞間に大きく変化することが推測された. そこで, 我々は共...

Ausführliche Beschreibung

Gespeichert in:
Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:山口医学 2006-10, Vol.55 (5), p.188-188
Hauptverfasser: 大野貴司, 白藤宜紀, 森 実真, 許 郁江, 山崎 修, 岩月啓氏
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
Tags: Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
Beschreibung
Zusammenfassung:表皮角化細胞は自然免疫機構として重要なデフェンシンなどの抗菌ペプチドを産生する. 抗菌ペプチドは抗菌活性のほかにケモカインとしての作用を有しており, 感染症病変以外の炎症性皮膚疾患でも発現が亢進していることが知られている. 我々は免疫染色法により尋常性乾癬病変部で正常皮膚やアトピー性皮膚炎病変にくらべHBD-2発現は明らかに亢進していることを確認した. 免疫染色の結果から, 発現部位は有棘層では角化細胞の細胞質に染色が認められた. しかし, 角層では染色はbasket weave patternとなりHBD-2の局在が角層で細胞質から細胞間に大きく変化することが推測された. そこで, 我々は共焦点レーザー顕微鏡を用いHBD-2発現をエラフィン, インボルクリンとの二重染色により検討した. 共焦点レーザー顕微鏡を用いた二重染色の結果は, HBD-2はインボルクリンではなくエラフィンと共存することが示され, HBD-2が角層ではintercellular spaceに局在することを示した. 培養表皮角化細胞では培地中にhBD-2が分泌された. 角層では角質細胞間にhBD-2が存在することは皮膚感染防御に適した分布であると考えられる. 次に我々は毛包炎病変部でリンパ球が産生する抗菌ペプチドであるグラニュライシンの発現と発現細胞の同定を試みた. 細菌性毛包炎での浸潤リンパ球は免疫染色で CD3+, CD4+, CD8+ Tリンパ球であり, Bリンパ球の浸潤はほとんどみられなかった. 共焦点レーザー顕微鏡を用いた二重染色により, 毛包炎病変部ではグラニュライシン発現細胞は, CD4+ Tリンパ球であることを示した. さらに, ウイルス感染症である単純ヘルペス, 帯状疱疹病変部でのグラニュライシン発現細胞の同定もこころみ, ウイルス感染病変ではグラニュライシンはCD4+Tリンパ球とCD8+Tリンパ球の両者が発現していることを明らかにした. 細菌感染症とウイルス感染症で抗菌ペプチドを発現する細胞に差があることは感染防御のメカニズムを考える上で興味深い結果であった.
ISSN:0513-1731