43. 空手道選手の短期急速減量におけるPOMSと血液生化学指標の変化

目的:空手道の組手競技をはじめ体重階級制が採用されている競技の多くでは, 選手は試合直前の2~10日間によく短期急速減量を行う. このような急速減量は, 減食, 絶食, 水分摂取の制限, 練習量の増加, 入浴・サウナ, 厚着での練習などによる発汗の亢進に起因するところが大きいため, 脱水や低栄養が引き起こされ, それらによって選手は生理的のみならず心理的にも影響を受けることが危惧される. 短期急速減量による生理的反応については, 血液生化学指標を中心に多くの研究成果が報告されているが, 心理的な影響に関する研究報告は少ない. そこで, 本研究では実際の現場でも実施することが容易な, McNai...

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Veröffentlicht in:東京慈恵会医科大学雑誌 2007, Vol.122 (6), p.260-260
Hauptverfasser: 井下佳織, 豊嶋建広, 中野昭一, 大野誠
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:目的:空手道の組手競技をはじめ体重階級制が採用されている競技の多くでは, 選手は試合直前の2~10日間によく短期急速減量を行う. このような急速減量は, 減食, 絶食, 水分摂取の制限, 練習量の増加, 入浴・サウナ, 厚着での練習などによる発汗の亢進に起因するところが大きいため, 脱水や低栄養が引き起こされ, それらによって選手は生理的のみならず心理的にも影響を受けることが危惧される. 短期急速減量による生理的反応については, 血液生化学指標を中心に多くの研究成果が報告されているが, 心理的な影響に関する研究報告は少ない. そこで, 本研究では実際の現場でも実施することが容易な, McNairらの開発した感情プロフィール検査(Profile of mood state:POMS)によって主観的疲労度, 心理的コンデションを把握し, 血液生化学指標との間に何らかの関係が見出されるか否かについて検討することを目的とした. 方法:体育大学男子空手道部部員8名(年齢19.8±1.4歳, 身長170.2±5.8cm, 体重66.5±6.7kg)を対象に, 7日間で体重の5~7%の急速減量を実施した. 減量方法は各人が従来より行ってきた任意の方法とし, 減量前, 減量終了時, 減量終了7日後(以下, 回復期)に, 身体組成, 血液生化学検査およびPOMSを実施した. 身体組成は早朝空腹時に. 多周波バイオインピーダンス体組成測定器(TANITA社製, 5~512kHZ, 12周波数, 電極数8)により測定した. 併せて, POMSを測定し, 続いて肘正中皮静脈より採血し, 血液生化学検査を行った. 結果および結論:体重は7日間で2.9±0.9kg, 体重比で4.3±1.3%減少した. Fat Free Mass(FFM)は1.9±0.6kg, Fat Massは1.0±0.5kg有意に減少した. 体水分量は42.6±3.3kgから, 減量後には41.2±3.5kgへ有意に減少し, これは減量前と比較し3.6%の減少であった. 血液生化学検査では, 減量後にWBC数, 血糖値, 中性脂肪値, rapid turnover protein値が低値を示した. また, POMSでは減量後にFatigue(疲労)とConfusion(情緒混乱)の得点が有意に上昇した. これらのことから, 空手道選手の短期急性減量では, 減量体重の約6割はFFMによって占められ, 体水分の減少は約3.6%程度であることが明らかになった. 低栄養を示唆する血液生化学指標とPOMSによる心理的指標の間には明らかな相関関係は認められなかった.
ISSN:0375-9172