A1. HBVの関与が示唆されラミブジンが奏効した再生不良性貧血合併肝障害の1症例

症例:患者は21歳女性. 平成15年2月下旬より右手首の疼痛が出現し近医受診, ロキソプロフェンナトリウムの投与を受けた. その後4月23日の採血にて肝障害(AST205, ALT274)を指摘された. 薬剤性肝障害と診断され, 5月2日よりプレドニゾロン10mg投与の上, 近医入院となった. 入院後もプレドニゾロン内服を継続したが, 肝障害の増悪とともに汎血球減少をきたした. ステロイドパルス療法やγグロブリン大量療法を行うも改善なく, 6月16日当院転院となった. 入院後の骨髄穿刺により再生不良性貧血と診断された. G-CSFの投与により経過観察されたが, 改善が得られず定期的輸血を余儀な...

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Veröffentlicht in:東京慈恵会医科大学雑誌 2004, Vol.119 (5), p.364-364
Hauptverfasser: 荒木崇, 新谷稔, 武田邦彦, 斎藤敦, 高木優, 丸山大, 西脇嘉一, 島田紀朋, 向出雅一, 前山史朗, 小林正之, 藤瀬清隆
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:症例:患者は21歳女性. 平成15年2月下旬より右手首の疼痛が出現し近医受診, ロキソプロフェンナトリウムの投与を受けた. その後4月23日の採血にて肝障害(AST205, ALT274)を指摘された. 薬剤性肝障害と診断され, 5月2日よりプレドニゾロン10mg投与の上, 近医入院となった. 入院後もプレドニゾロン内服を継続したが, 肝障害の増悪とともに汎血球減少をきたした. ステロイドパルス療法やγグロブリン大量療法を行うも改善なく, 6月16日当院転院となった. 入院後の骨髄穿刺により再生不良性貧血と診断された. G-CSFの投与により経過観察されたが, 改善が得られず定期的輸血を余儀なくされた. 肝障害も寛解増悪を繰り返し, ALTは819まで上昇した. 入院後の経過で再生不良性貧血と肝障害の推移が連動していることから何らかのウイルス感染による病態が想定された. 7月末より黄疸が出現しビリルビンの上昇が続き, 総ビリルビンは12. 1に達した. 各種ウイルスマーカーは陰性であったが, 入院初期にHBe抗体, HBc抗体のみが一過性に陽性であった. Occult HBVの関与を考え, 8月15日よりラミブジン100mgの経口投与を開始したところ, 投与4週後にトランスアミナーゼが正常化し, ビリルビンも6週後にほぼ正常化した. 再生不良性貧血についてはATGとサイクロスポリンAの投与により改善傾向が得られた. 週1回の輸血により比較的良好な状態が保てるようになり12月10日退院となった. 後日ラミブジン投与前の保存血清を用い, 高感度検出系のHBV RTD-PCR Direct法にてHBV-DNAの定量を行ったところ, 1.8LogIU/mlと陽性所見が得られ, ラミブジン投与後は陰性化していた. 考察:本症例は原因不明の再生不良性貧血合併肝障害であったが, HBe抗体とHBc抗体が一過性に陽性であり, 高感度HBV-DNA測定にて陽性所見が得られたことからoccult HBVの存在が強く示唆された. また臨床経過からラミブジンの投与が肝障害に有効と思われた. Occult HBVは非A非B非C型肝炎の原因のひとつとして注目されており, その治療法を考えるうえで貴重な症例と思われたため報告する.
ISSN:0375-9172