O-9-6 ヘパリン起因性血小板減少症抗体陽性の8ヵ月児に対して体外循環を行った1症例

【はじめに】 ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)既往患者に人工心肺を使用する際は, 可能な限り抗PF4/H抗体が陰性化するまで待機し, 人工心肺中はヘパリンを用いて手術を行い, 離脱後はヘパリンを直ちに中止することが推奨されている. 今回, 生後3ヶ月目にHIT抗体陽性と診断されたが, ヘパリンを用いて体外循環を施行した経験を報告する. 【症例】 生後8ヶ月の男児. 身体所見は身長64cm, 体重6.3kg, 体表面積0.32m2であった. 家族歴:特記事項なし, 既往歴:移植関連微小血管障害(TAM), 診断:心房中隔欠損症(ASD), 肺高血圧症(PH), ダウン症候群であった. 【現病...

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Veröffentlicht in:体外循環技術 2011, Vol.38 (3), p.413-413
Hauptverfasser: 横田基次, 松本猛志, 萱島道徳, 早田義宏, 吉川義朗, 谷口繁樹, 松本雅則, 藤村吉博, 吉澤弘行
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:【はじめに】 ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)既往患者に人工心肺を使用する際は, 可能な限り抗PF4/H抗体が陰性化するまで待機し, 人工心肺中はヘパリンを用いて手術を行い, 離脱後はヘパリンを直ちに中止することが推奨されている. 今回, 生後3ヶ月目にHIT抗体陽性と診断されたが, ヘパリンを用いて体外循環を施行した経験を報告する. 【症例】 生後8ヶ月の男児. 身体所見は身長64cm, 体重6.3kg, 体表面積0.32m2であった. 家族歴:特記事項なし, 既往歴:移植関連微小血管障害(TAM), 診断:心房中隔欠損症(ASD), 肺高血圧症(PH), ダウン症候群であった. 【現病歴】 産科にて自然分娩にて出生. Apgar score 9/9点. ダウン様顔貌で哺乳力が弱く, 近院へ入院となる. TAMの診断から当院に転院となり, 化学療法にて寛解する. その後3ヶ月検診にてASDとPHが判明し, 当院へ再入院となる. 検査時のヘパリン投与後, 血小板数24万μLから5万μLまで低下したため, HIT抗体検査にてHITと診断される. その後も陽性であったため, ヘパリン負荷テストを行い, 観察を行うが血小板数や凝固検査で異常は認めず, HIT抗体価の上昇を認めなかった. HIT抗体陽性ではあるがHITではないとの判断し, 8ヶ月目にヘパリンを用いて体外循環下にASD閉鎖術を施行した. 【術中経過】 ヘパリン投与で症状の変化もなく, ACTの延長を確認した. 体外循環開始と同時にリザーバー内に血餅を確認したが, 送血圧の上昇などの異常は認めず, 執刀医・麻酔科医・体外循環技術者での相談の結果, 予定通り手術を続行した. 大動脈遮断時間5min, 体外循環時間35minであった. 術後は血小板数7万μLまで低下が認められたが, 血栓・塞栓症状を呈することなく, 術後2日目にICUから一般病棟に転棟となった. 【まとめ】 抗凝固剤にアルガトロバンを用いた体外循環はコントロールが困難であり, 国内での小児体外循環の報告例はない. 今回, ヘパリン負荷テストでHITを否定して体外循環を施行するに至ったが, リザーバー内で血餅が認められたことから今後は更なる検討が必要である.
ISSN:0912-2664