44. 頭部外傷患者の社会適応について

[はじめに] 交通事故による頭部外傷後, 遂行障害や発動性の低下などにより復職が困難となった症例に対して, 社会復帰を目指す過程で環境整備を行い, 受け入れ体制を整えた結果, 社会適応能力が高まり, 発語や行動に変化がみられたので報告する. [症例] 23歳, 男性, 大工見習い, 高卒. [診断名] 脳挫傷, 脳出血, びまん性軸索損傷. [現病歴] 1998年5月, 交通事故に遭い, 来院時JCS III-200, 頭部外傷に対しては, 保存的加療. [CT所見] 右前頭葉挫傷性出血, 両前頭部硬膜下血腫. [経過] 訓練開始時, 自発的に話すことはほとんどなく, 選択肢がないと答えられず...

Ausführliche Beschreibung

Gespeichert in:
Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:聴能言語学研究 2002, Vol.19 (3), p.202-202
Hauptverfasser: 小国由紀, 藤川敏子
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
Tags: Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
Beschreibung
Zusammenfassung:[はじめに] 交通事故による頭部外傷後, 遂行障害や発動性の低下などにより復職が困難となった症例に対して, 社会復帰を目指す過程で環境整備を行い, 受け入れ体制を整えた結果, 社会適応能力が高まり, 発語や行動に変化がみられたので報告する. [症例] 23歳, 男性, 大工見習い, 高卒. [診断名] 脳挫傷, 脳出血, びまん性軸索損傷. [現病歴] 1998年5月, 交通事故に遭い, 来院時JCS III-200, 頭部外傷に対しては, 保存的加療. [CT所見] 右前頭葉挫傷性出血, 両前頭部硬膜下血腫. [経過] 訓練開始時, 自発的に話すことはほとんどなく, 選択肢がないと答えられず, 記憶にも曖昧な点がみられた. 発動性も低下しており, 反応にも乏しかったが, 徐々に即時記憶に改善がみられ, 断片的な会話であったが, 発話量も若干, 増えた. しかし, 職場に復帰するも不適応を起こし, 発症2年後より, 家庭内で異常な行動がみられ, 引きこもるようになった. そこで, 規則正しい生活が送れるように, 患者に理解のある受け入れ先を探し, 家族ぐるみで受け入れてもらう配慮を行った結果, 自発的に話すことが増え, 断片的な会話もなくなり, 表情も生き生きし, 行動が広がり, 意欲的になる変化がみられた. [まとめ] 頭部外傷患者が社会復帰するにあたり, 患者の能力や状況を受け入れ側に説明したことで, 受け入れ側が気長に接してくれる, 説明を丁寧にしてくれる, 積極的に話しかけるなどの配慮をし, あくまでも患者に合わせ, 家族ぐるみで受け入れの体制を取ったことで, 徐々に仕事に慣れ, 適応できるようになった. また, 受け入れてくれる所があるという安心感からか, 患者自身も明るくなり, 自発的に話す変化がみられた. まだ, 一般社会で適応していくことについては, 問題があるが, 環境整備と受け入れ体制を整えることで, 頭部外傷患者も適応能力を高めることができるのではないかと考える.
ISSN:0912-8204