卵巣未熟奇形腫の治療中に増大する腫瘍を認め, 未熟奇形腫の増悪と growing teratoma syndrome との鑑別に苦慮した1例

悪性卵巣胚細胞性腫瘍は若年女性に好発するまれな疾患であり, 化学療法が著効することが知られている. その治療中, または治療後に腫瘍マーカーは正常化しているものの, 再発腫瘍が増大傾向を示す growing teratoma syndrome (以下GTS)という良性疾患が1982年に報告されている. 今回我々は未熟奇形腫Grade3の術後化学療法中に増大する腫瘍を認め, 未熟奇形腫の増悪とGTSとの鑑別に苦慮した1例を経験したので報告する. 症例は24歳女性, 下腹部痛を主訴に当院受診. 腹部CTで新生児頭大の骨盤内腫瘤を認め, MRIで未熟奇形腫の破裂が疑われた. 腫瘍マーカーはAFP =...

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Veröffentlicht in:現代産婦人科 2020-12, Vol.69 (1), p.101-105
Hauptverfasser: 中村しほり, 楠本知行, 寺林博之, 小嶋一司, 舩冨爽子, 西村智樹, 原理恵, 田中優, 障子章大, 福原健, 中堀隆, 本田徹郎, 長谷川雅明
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:悪性卵巣胚細胞性腫瘍は若年女性に好発するまれな疾患であり, 化学療法が著効することが知られている. その治療中, または治療後に腫瘍マーカーは正常化しているものの, 再発腫瘍が増大傾向を示す growing teratoma syndrome (以下GTS)という良性疾患が1982年に報告されている. 今回我々は未熟奇形腫Grade3の術後化学療法中に増大する腫瘍を認め, 未熟奇形腫の増悪とGTSとの鑑別に苦慮した1例を経験したので報告する. 症例は24歳女性, 下腹部痛を主訴に当院受診. 腹部CTで新生児頭大の骨盤内腫瘤を認め, MRIで未熟奇形腫の破裂が疑われた. 腫瘍マーカーはAFP = 35464U/ml, hCG = 40.9ng/mlと高値であった. 左付属器切除術と大網部分切除術を実施し, 病理診断は卵黄嚢腫瘍を伴う未熟奇形腫Grade3 stageIC3期であった. 術後化学療法としてBleomycin, Etoposide, Cisplatinの3剤併用(以下BEP)療法を実施したが, 2サイクル終了時点の診察でダグラス窩に腫瘤性病変を認めた. 4サイクル終了時点でAFP = 21U/mlと低値になったものの, 腫瘍は増大傾向であり未熟奇形腫の増悪が否定できないことから残存腫瘍摘出術を行った. 腫瘍は直腸に浸潤しており, 直腸低位前方切除を要した. 初回手術では確認されなかった播種病変も認めたためすべて摘出した. 病理組織は成熟奇形腫成分のみで構成されており, GTSと診断した. GTSは診断が遅れると切除困難となる症例も報告されている. 胚細胞性腫瘍の治療経過中は定期的に診察または画像検査を行い, 腫瘍マーカーが低下しているのに反し残存腫瘍の増大を認めた場合は, GTSを念頭に入れ手術を考慮すべきである.
ISSN:1882-482X