「生活意欲の活性化」に向けたアプローチ

本事例は, 腰痛に悩まされながらもなんとか自力で生活していた入居者が腰痛と右下肢痛が原因で転倒した. 翌日, 脱水症のため病棟へ入室となった. 退室後も腰や右下肢の痛みは持続しているため, 移動は車椅子を使用し, 再転倒防止に努めた. しかしその後, 日増しに表情は暗くなり, 精神的に沈み込むなど生活意欲の減退が見られるようになった. このような状況を改善し, 自立した生活を送ることができるように本人の主体性を尊重し, 歩行補助具を使用してADLを拡大し, 生活意欲の活性化が図られるようアプローチしたので報告する. 1. 対象:M氏女性81歳2. 研究期間:H12年9月19日~H13年3月31...

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Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:日本ハンセン病学会雑誌 2002-02, Vol.71 (1), p.69-69
Hauptverfasser: 大内修, 狩野京子, 石川太巳子, 佐藤幸子
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:本事例は, 腰痛に悩まされながらもなんとか自力で生活していた入居者が腰痛と右下肢痛が原因で転倒した. 翌日, 脱水症のため病棟へ入室となった. 退室後も腰や右下肢の痛みは持続しているため, 移動は車椅子を使用し, 再転倒防止に努めた. しかしその後, 日増しに表情は暗くなり, 精神的に沈み込むなど生活意欲の減退が見られるようになった. このような状況を改善し, 自立した生活を送ることができるように本人の主体性を尊重し, 歩行補助具を使用してADLを拡大し, 生活意欲の活性化が図られるようアプローチしたので報告する. 1. 対象:M氏女性81歳2. 研究期間:H12年9月19日~H13年3月31日3. 対策:11)生活意欲の減退の理由をよく聞き, 一緒に考え問題を解決する. (2)理学療法室にて機能回復訓練を行なう. (3)歩行補助具を使用し歩行の安定を図る. 生活意欲の減退の理由を知るためM氏の視点に立ち, これまでの生活背景や意向を尊重し, こちらの価値観を押しつけることなく話し合ったところ, 「前の生活のように自力で歩きたい」という願望があった. しかし職員に対して遠慮してしまい一人悩んでいた. そこでM氏に対し遠慮なく不満を訴えてよいことや, 遠慮なく介護を受ける権利もあることを理解が得られるように説明し, 職員自身も聴く耳を持ち, 受け止めたことで本心を聞き出すことが出来た. そして, どうしたら安全に歩行できるのかプラス思考で検討した. 歩行補助具としてシルバーカーの使用を勧めたところ, 「年寄りくさくて嫌だ」と渋っていたが, シルバーカーの利点を納得いくよう説明し, 同意が得られ購入した. 理学療法室で温熱療法筋力訓練歩行訓練, 更にシルバーカーを用いてADLの拡大に努めた. 約2ヵ月後には, 足腰の痛みはほとんど訴えることなくADLが拡大し, 表情も明るく寮友との交流も深まった. M氏が一人で悩んでいた原因は転倒したことで身体の衰えを自覚したことによる「心理的ダメージ」もあったが, 職員に介護されている立場上, 自分の思いを表出できないでいた. この事例のように入居者からの訴えがない場合, 入居者が望んでいるものは何なのかを入居者の立場に立ち, 積極的な関わりを持つことが大切である. 同時に入居者が持っている望みや, これからの生活はどうありたいか等をアセスメントし, その目標を達成するにはどうしたらよいのかを, 介護員と入居者が一緒に考え, 行動することで入居者の自立に向けての意欲を引き出すことになり, 自己実現につながると考える.
ISSN:1342-3681