ダウン症候群における社会性に関連する能力の退行様症状に対し塩酸ドネペジルが著効したダウン症候群の14歳女児例

ダウン症候群における社会性に関連する能力の退行様症状は, 20歳前後で日常生活能力が比較的短期間で急激に低下するもので, 動作・行動面, 対人面, 情諸・性格面, 身体面に現れる. 具体的には緩慢, 表情の乏しさ, 会話減少, 興味消失, 頑固, 興奮, 睡眠障害, 食欲減退, 体重減少があげられ, 後期には全面介助が必要なほどの日常生活能力の高度低下がみられる. しかし退行様症状に対する認知度はまだあまり高くない. うつ, 気分障害, アルツハイマー病初期症状などと評価され, 適切に診断されていない症例も多く存在しているものと思われる. また治療薬である塩酸ドネペジルは2013年8月より臨床...

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Veröffentlicht in:東京女子医科大学雑誌 2017/05/31, Vol.87(Extra1), pp.E114-E117
Hauptverfasser: 多田, 春香, 老谷, 嘉樹, 鈴木, 恵子, 梅津, 亮二, 加藤, 文代, 杉原, 茂孝
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:ダウン症候群における社会性に関連する能力の退行様症状は, 20歳前後で日常生活能力が比較的短期間で急激に低下するもので, 動作・行動面, 対人面, 情諸・性格面, 身体面に現れる. 具体的には緩慢, 表情の乏しさ, 会話減少, 興味消失, 頑固, 興奮, 睡眠障害, 食欲減退, 体重減少があげられ, 後期には全面介助が必要なほどの日常生活能力の高度低下がみられる. しかし退行様症状に対する認知度はまだあまり高くない. うつ, 気分障害, アルツハイマー病初期症状などと評価され, 適切に診断されていない症例も多く存在しているものと思われる. また治療薬である塩酸ドネペジルは2013年8月より臨床試験が開始されたばかりである. 今回, 診断の手引きを基に退行様症状と診断した14歳女児例に対し塩酸ドネペジルを投与した. 診断に至るまでは抗うつ薬などによる治療を行うも改善せず, 状は悪化した. しかし塩酸ドネペジルを開始することで, 全面介助が必要なほど日常生活能力の高度低下を認めていた児が, 自立し通学が可能となるほどの劇的な改善を認めた. 今後, 「ダウン症候群における社会性に関連する能力の退行様症状」の診断の手引きが広く普及し, 適切に加療される症例が増えることが望まれる.
ISSN:0040-9022
2432-6178
DOI:10.24488/jtwmu.87.Extra1_E114