6-ホルミルプテリンに誘発された細胞内過酸化水素の温熱アポトーシスに及ぼす影響

【目的】6-ホルミルプテリン(6-formylpterin:6-FP)は, 癌細胞において葉酸化合物の分解産物として特異的に多く生成され, がん患者の尿中に認められる物質である. また最近の基礎的研究から, 6-FPが細胞内で生成されるスーパーオキサイドを消去し, 細胞内に過酸化水素を誘発すること, さらに6-FPがヒト好中球では障害された抗菌活性の回復能を有すること, 腫瘍細胞(HL-60, PanC-1, Jurkat)ではアポトーシスを誘導し, 細胞増殖を抑制すること等の興味ある新知見が報告されている. 今回われわれは, 細胞内で生成される過酸化水素が, 温熱によるアポトーシスを増強し癌...

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Veröffentlicht in:日本ハイパーサーミア学会誌 2003, Vol.19 (suppl), p.101-101
Hauptverfasser: 和田重人, 近藤隆, 崔正国, 趙慶利, 小川良平, 古田勲, 荒井俊之, 牧野圭祐
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:【目的】6-ホルミルプテリン(6-formylpterin:6-FP)は, 癌細胞において葉酸化合物の分解産物として特異的に多く生成され, がん患者の尿中に認められる物質である. また最近の基礎的研究から, 6-FPが細胞内で生成されるスーパーオキサイドを消去し, 細胞内に過酸化水素を誘発すること, さらに6-FPがヒト好中球では障害された抗菌活性の回復能を有すること, 腫瘍細胞(HL-60, PanC-1, Jurkat)ではアポトーシスを誘導し, 細胞増殖を抑制すること等の興味ある新知見が報告されている. 今回われわれは, 細胞内で生成される過酸化水素が, 温熱によるアポトーシスを増強し癌治療の向上に寄与する可能性について, ヒト組織球性リンパ腫U937細胞を用いて検討した. 【対象および方法】実験にはヒト組織球性リンパ腫U937細胞を用いた. 6-FPの濃度として毒性のない300μMを使用した. 温熱処理に際しては細胞を培養チューブに入れ44℃で20分間恒温水槽で加温した. アポトーシスをギムサ染色標本の形態変化とPIとFITC-Annexin V染色標本のフローサイトメトリー解析により行った. ミトコンドリア膜電位, カスパーゼ-3の活性, DNA断片化, 細胞内カルシウム濃度の変化および細胞増殖遅延についても調べた. 【結果】形態学的観察の結果, 6-FP併用温熱処理でクロマチン凝集や核断片化が促進された. DNA断片化率は温熱単独処理に対し, 6-FP併用処理で約30%増強された. PI/Annexin V陽性細胞は温熱単独処理で10%であるのに対し, 6-FP併用温熱処理で20%に増強された. ミトコンドリア膜電位の低下とカスパーゼ-3の活性化が, 温熱単独処理に比べて6-FP併用処理により増強された. 細胞内Ca2+濃度は温熱単独処理により増加し, 6-FP併用処理によりさらに増加した. 細胞増殖も6-FP併用処理で抑制された. 【結論】6-FPの温熱誘発アポトーシス増感剤としての有用性を示唆し, アポトーシス増強機構について, 細胞内Ca2+濃度の増加とミトコンドリア-カスパーゼ経路の活性化の関与を示した.
ISSN:0911-2529