術前診断が困難で腹腔鏡手術にて加療し得た難治性骨盤腹膜炎の一例
骨盤腹膜炎には抗生物質投与が有効な症例も多いが, 附属器膿瘍などが存在し, 保存的加療では症状が軽快しない手術を必要とする症例も散見される. 今回画像診断上, 明らかな病巣が指摘しえず, 虫垂炎術後の癒着性イレウスとの鑑別が困難であったが腹腔鏡下に加療し得た難治性骨盤腹膜炎の一例を経験したため報告する. 症例は28歳既往歴に17歳時虫垂炎にて手術27歳時にクラミジア頚管炎の治療歴があった. 下腹部痛, 帯下の異臭を主訴として当院救急外来受診. 虫垂炎術後であり, 下腹部痛強く, 当科紹介受診となった. 診察上ダグラス窩圧痛を認め, 白血球14800/ul, CRP3.1mg/dlと炎症所見もあ...
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Zusammenfassung: | 骨盤腹膜炎には抗生物質投与が有効な症例も多いが, 附属器膿瘍などが存在し, 保存的加療では症状が軽快しない手術を必要とする症例も散見される. 今回画像診断上, 明らかな病巣が指摘しえず, 虫垂炎術後の癒着性イレウスとの鑑別が困難であったが腹腔鏡下に加療し得た難治性骨盤腹膜炎の一例を経験したため報告する. 症例は28歳既往歴に17歳時虫垂炎にて手術27歳時にクラミジア頚管炎の治療歴があった. 下腹部痛, 帯下の異臭を主訴として当院救急外来受診. 虫垂炎術後であり, 下腹部痛強く, 当科紹介受診となった. 診察上ダグラス窩圧痛を認め, 白血球14800/ul, CRP3.1mg/dlと炎症所見もある為, 入院の上, 抗生物質投与, 輸液, 絶食にて経過観察しつつ精査することとした. 腹部超音波上, 腹水貯留ならびに小腸の拡張像と内容物の流動性の低下を認め, 虫垂炎術創部に一致して回盲部に狭窄像を思わせる部位があり癒着性イレウスが疑われた. しかし, CT上明らかな病巣部を指摘しえず, 骨盤腹膜炎による麻痺性イレウスとなっている可能性が考えられた. 翌日には白血球21100/ul, CRP22.7mg/dlと炎症所見の進行も認めたため, 抗生剤投与のみでは症状の改善は望めないと判断し, 試験的に腹腔鏡を施行した. 左卵管の軽度の腫大と膿汁様の腹水, クラミジアによると思われる癒着を認め, 大量の温生食にて洗浄し, 附属器周囲の癒着剥離を行い, ペンローズドレーンをダグラス窩に留置した. 膿汁漏出は術後2日には軽減, 発熱や腹痛などの症状や炎症所見は徐々に改善し, 術後7日には白血球4300/ul, CRP0.1mg/dlまで低下した. 難治性骨盤腹膜炎症例に対して, 他の疾患との鑑別が困難で明らかな感染巣が確認できていなくても積極的に腹腔鏡下に大量の温生食洗浄を行うことが腹膜炎症状の改善に有効であることが示唆された. |
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ISSN: | 1884-9938 |