重力刺激による行動学的鎮痛の発現

目的:冷水遊泳, 絶食, 拘束など種々のストレスにより, 鎮痛効果が生じることが報告されている. しかし, ストレスの強さを定量化した実験はほとんどなく, ストレスによる鎮痛効果の有無やその大きさについては一定の見解が得られていない. そのため, 強さを定量的に制御しうるストレスを負荷することは, ストレス鎮痛のメカニズムを解明する上で不可欠の実験条件である. そこで, 我々はラットにおいて, 重力刺激がストレスとして定量化しやすくこの刺激が鎮痛作用を発現しさらにナロクソンによって拮抗されることを見い出したので報告する. 方法:本実験用に特注した遠心機を用いて, 1.0G(n=5)の対照群では...

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Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:PAIN RESEARCH 2000, Vol.15 (3), p.48-48
Hauptverfasser: 川内泰子, 粂井康宏, 槇田浩史, 戸田一雄
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:目的:冷水遊泳, 絶食, 拘束など種々のストレスにより, 鎮痛効果が生じることが報告されている. しかし, ストレスの強さを定量化した実験はほとんどなく, ストレスによる鎮痛効果の有無やその大きさについては一定の見解が得られていない. そのため, 強さを定量的に制御しうるストレスを負荷することは, ストレス鎮痛のメカニズムを解明する上で不可欠の実験条件である. そこで, 我々はラットにおいて, 重力刺激がストレスとして定量化しやすくこの刺激が鎮痛作用を発現しさらにナロクソンによって拮抗されることを見い出したので報告する. 方法:本実験用に特注した遠心機を用いて, 1.0G(n=5)の対照群では遠心機にラットを10分間放置し, 1.5G(n=5), 2.0G(n=16)および4.0G(n=7)の重力刺激群ではそれぞれ98rpm, 116rpm, 165rpmで10分間回転した. ラットの姿勢は回転中心を吻側とした. 回転前と回転直後から1時間後まで, von Frey様テスターを用いて, 全身8箇所の部位の引っこめ反射の閾値を測定した. また, ナロクソン0.1mg/gを腹腔内投与後(n=5), 2.0Gで回転し同様に閾値を測定した. 結果および考察:2.0Gと4.0Gの刺激条件では回転前に比べ回転後は全ての部位において閾値が上昇し, 上昇度は2.0Gと4.0Gとの間に差はなかった. 閾値の上昇は2.0Gでは上半身で顕著であったが, 4.0Gでは体部位による差はなかった. またこの効果はナロクソン投与により減弱された. したがって, 内因性オピオイドが鎮痛発現に関与していることが明らかとなった. 1.5Gでは閾値の上昇は見られず閾値の低下する例も観察された. 本研究により, 2.0Gと4.0Gの重力刺激はストレスとして作用し, 従来から報告されているストレス鎮痛と同様のメカニズムで発現している可能性が示唆される.
ISSN:0915-8588