成熟ラット脊髄後角膠様質細胞におけるグリシン作動性抑制性シナプス伝達に対するムスカリン作動薬の作用
neostigmineなどの抗コリンエステラーゼ薬は実験動物やヒトにおいてクモ膜下投与により抗侵害作用を発揮し, その作用は脊髄後角に存在するムスカリン受容体を介することがこれまでに報告されているが, その詳細な機序に関しては未だ明らかでない. 以前, ムスカリン受容体刺激により脊髄後角膠様質(SG)におけるGABA含有介在ニューロンよりのGABA放出が促進され, GABA作動性IPSCを増加させる事が当教室の馬場らにより報告されているが, SGにおけるglycine含有介在ニューロンに対するムスカリン作動薬の作用に関してはこれまでに報告がない. そこで今回我々は, 成熟ラット脊髄横断スライス...
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Veröffentlicht in: | PAIN RESEARCH 2000, Vol.15 (3), p.36-36 |
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Hauptverfasser: | , , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | neostigmineなどの抗コリンエステラーゼ薬は実験動物やヒトにおいてクモ膜下投与により抗侵害作用を発揮し, その作用は脊髄後角に存在するムスカリン受容体を介することがこれまでに報告されているが, その詳細な機序に関しては未だ明らかでない. 以前, ムスカリン受容体刺激により脊髄後角膠様質(SG)におけるGABA含有介在ニューロンよりのGABA放出が促進され, GABA作動性IPSCを増加させる事が当教室の馬場らにより報告されているが, SGにおけるglycine含有介在ニューロンに対するムスカリン作動薬の作用に関してはこれまでに報告がない. そこで今回我々は, 成熟ラット脊髄横断スライス標本を用いてSGよりblind whole-cell patch-clamp法を行い, GABA_A 受容体阻害薬であるbicuculline(20μM)存在下に自発性のglycine作動性IPSCを記録し, その発生頻度および振幅に対するムスカリン作動薬の影響について検討した. ムスカリン受容体作動薬であるcarbachol(10μM)は, 自発性IPSCの発生頻度および振幅を増加させた. このcarbacholの作用は, glycine受容体阻害薬のstrychnine(2μM)投与により消失した. またTTX(1μM)の同時投与により, carbacholによって増加した自発性IPSCの振幅は減少したが, その発生頻度の増加は完全にブロックされなかった. neostigmine(10μM)投与下では, 同様に自発性IPSCの発生頻度および振幅を増加させた. carbacholまたはneostigmineの自発性IPSCに対する作用はD-tubocurarine(10μM)存在下では変化せず, atropine(1μM)により抑制された. 以上の結果から, GABA作動性抑制性シナプス伝達におけるのと同様に, SGのglycine含有ニューロンの軸索終末および細胞体にはムスカリン受容体が存在し, コリン作動薬及び抗コリンエステラーゼ薬投与によりムスカリン受容体を介してglycineの放出を促進し, glycine作動性の抑制性シナプス伝達を亢進させている事が示唆された. この事はクモ膜下腔に投与された抗コリンエステラーゼ剤の抗侵害作用発生機序の一つと考えられた. |
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ISSN: | 0915-8588 |