熱刺激による痛覚計測における刺激開始条件の制御について

我々は, 発痛装置として輻射熱型熱刺激装置, 接触型熱刺激装置を開発し, 熱刺激による種々の痛覚計測法を検討している1-3). 熱刺激による痛覚計測では, 室温や測定部位温度の高低が測定値に影響を与えるため, 熱刺激開始前の温度条件を一定に制御する必要がある. 皮膚温度を一定に保つ予備加温を行った後, 熱刺激を開始する方法が有効であるが, 単純な一定時間の加温では制御効果は十分とは言えない. ここでは, 加温による皮膚の温度勾配の変化に注目し, 定温度加温時の注入熱量を基準とした熱刺激開始条件の制御法を検討した. 1.注入熱量を基準にした予備加温法 接触型熱刺激装置(NYT-9002)では,...

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Veröffentlicht in:PAIN RESEARCH 1994, Vol.9 (3), p.175-175
Hauptverfasser: 水谷好成, 山本光璋, 青木秀樹, 高島和宏, 中尾光之, 今井正三, 工藤治夫
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:我々は, 発痛装置として輻射熱型熱刺激装置, 接触型熱刺激装置を開発し, 熱刺激による種々の痛覚計測法を検討している1-3). 熱刺激による痛覚計測では, 室温や測定部位温度の高低が測定値に影響を与えるため, 熱刺激開始前の温度条件を一定に制御する必要がある. 皮膚温度を一定に保つ予備加温を行った後, 熱刺激を開始する方法が有効であるが, 単純な一定時間の加温では制御効果は十分とは言えない. ここでは, 加温による皮膚の温度勾配の変化に注目し, 定温度加温時の注入熱量を基準とした熱刺激開始条件の制御法を検討した. 1.注入熱量を基準にした予備加温法 接触型熱刺激装置(NYT-9002)では, フィルム型の加熱素子に加える電力を制御し, 定熱量加温・定温度加温などが実現できる2,3). 定温度加温時の加熱量(注入熱量)は加温開始時に大きく, その後熱平衡状態に達するまで減少していく. この注入熱量の変化は, 被加熱部の温度勾配の変化を反映していると考えられる. そこで, 痛覚を生じさせない定温度加温を予備的に行い, あらかじめ定めた基準値まで注入熱量が減少した時点で予備加温を終了し, 痛覚計測のための熱刺激を開始する方法を検討した. 予備加温温度は35℃とし, 予備加温終了判定の注入熱量の基準値は100, 80, 60mWと変化させた. 予備加温に続けて定熱量加温(350mW, 2sec)を行い, その最高到達温度により予備加温の効果を評価した. 測定部位は下肢脛骨内側部とし, 6箇所2サイクル(12回)の測定を100, 80, 60mWの順で連続して行った. これを3回繰り返し, 各36回のデータを得た. 同一部位への加温は3min以上の間隔をおいた. 室温は23±1℃に保ち, 下肢に対し特別な保温は行わなかった. 2.実験結果 2名の健常男子に対し測定した結果をまとめると, 刺激前温度は30~33℃の範囲に分布した. この範囲で刺激前温度に対する最高到達温度の関係を調べると, 刺激前温度が高いほど最高到達温度が高くなる正の相関があり, その一次回帰直線の勾配, (Δ最高到達温度)/(Δ刺激前温度)は, 基準熱量100, 80, 60mWの順に, 0.33, 0.20, 0.11と小さくなった. 最高到達温度の最高-最低温度差も同様に1.2, 0.9, 0.6℃と順に小さくなった. すなわち, 注入熱量の基準値を小さくするほど, 予備加温の効果が大きく, 刺激前温度の影響が小さくなっている. 一方, 予備加温に要する時間は, 基準値が小さいほど長く, 刺激前温度が低くなるほど長くなったが, 刺激前温度が31℃以上であれば, 予備加温は30sec以内で終了した. この結果は, 刺激前温度の違いが痛覚計測の結果に与える影響を軽減するために, 注入熱量を基準にした予備加温法が実用的な方法であることを示唆している. 1)山本, 水谷他;信学会論文誌, J73-D-II, pp.470-477(1990). 2)水谷, 小野寺他;電子情報通信学会春季大会, D-181(1992). 3)水谷, 佐藤他;Pain Res.,8-3, P.171-172(1993).
ISSN:0915-8588