P119 人工脳硬膜の安全性評価に関する研究:人工硬膜埋め込みラットの神経伝達物質を用いた神経毒性評価

【目的】近年, 脳外科手術用に合成生体吸収性人工硬膜が開発された. 人工硬膜は乳酸ポリマーの重合体から構成され, 重合にはジブチルスズ(DBT)化合物及びオクチル酸スズが触媒として使われ, 硬膜中に残存する. この人工硬膜は脳内で吸収されるため, 脳組織がこれらの化学物質に曝露されることになる. 今回の研究では, 人工硬膜製品及びDBTを高い濃度で含有する乳酸ラクチド膜をラットの頭蓋内に埋め込み, 4週間後に神経伝達物質及びその代謝産物を測定することで, 実際の臨床応用のモデルとして神経毒性を評価することを目的とした. 【方法】雄のWistar系ラットをcontrol(手術のみを行う群), 人...

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Veröffentlicht in:日本衛生学雑誌 2007, Vol.62 (2), p.443-443
Hauptverfasser: 角田正史, 伊藤京子, 井上葉子, 工藤雄一朗, 佐藤敏彦, 片桐裕史, 秋田久直, 佐治眞理, 土屋利江, 相澤好治
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:【目的】近年, 脳外科手術用に合成生体吸収性人工硬膜が開発された. 人工硬膜は乳酸ポリマーの重合体から構成され, 重合にはジブチルスズ(DBT)化合物及びオクチル酸スズが触媒として使われ, 硬膜中に残存する. この人工硬膜は脳内で吸収されるため, 脳組織がこれらの化学物質に曝露されることになる. 今回の研究では, 人工硬膜製品及びDBTを高い濃度で含有する乳酸ラクチド膜をラットの頭蓋内に埋め込み, 4週間後に神経伝達物質及びその代謝産物を測定することで, 実際の臨床応用のモデルとして神経毒性を評価することを目的とした. 【方法】雄のWistar系ラットをcontrol(手術のみを行う群), 人工硬膜製品埋め込み群, 高濃度DBTポリ乳酸ラクチド膜埋め込み群の3群に, それぞれ10匹ずつ分けた. 人工硬膜製品の残存スズ濃度は最大20ppmであるので, 高濃度DBTポリ乳酸ラクチド膜は残存スズ濃度100ppmとしてテーラーメードで作成した. ラットを麻酔後, 脳定位固定装置に固定し頭蓋骨を露出し, 電動式手術器械Osada Success 402M, 内径5mmのボーントレフィンバーを用いて, 頭蓋骨から直径5mmの円形の頭蓋骨片をくり抜いた. 出来た穴より, それぞれの膜を埋め込んだ. その後, 頭蓋骨片を元の位置に戻し, 骨膜及び皮膚を縫合した. 手術後4週間, 同じ群から2匹ずつ一つのケージに入れて飼育した. 観察期間終了後, ラット脳を摘出し脳表面を肉眼的に観察した後, 氷冷下でGlowinski and Iversen(1966)の方法で7部位(大脳, 小脳, 延髄, 中脳, 線条体, 下垂体, 海馬)に分割し0.1% cysteine入り0.05M perchloric acidへ即座に浸けてホモジェナイズすることにより抽出した. 脳各部位のnorepinephrine, dopamine(DA), dihydoxyphenylacetic acid(DOPAC), homovanillic acid(HVA), serotonin(5-HT), 5-hydroxyindolacetic acid(5-HIAA)をECD付きHPLCで同時に測定した. カラムは逆相カラムを用い, mobile phaseの組成は9.6g/リットル citric acid, 100mg/リットル sodium octane sulfate, 40mg/リットル EDTA, 15% methanolであった. 各神経伝達物質及び代謝産物の群毎の平均値を算出し, また神経伝達物質とその代謝産物の比(DOPAC/DA, HVA/DA, 5-HIAA/5-HT)についても平均値を群毎に算出した. 群間の平均値を一元配置分散分析で比較し, post hoc testにはFisherのPLSD法を用いた. 【結果】脳摘出の後の大脳表面には顕著な変化が見られなかった. 骨の再生が速く, 多くの膜が完全には覆われていないものの, 手術時にかぶせた骨と再生骨との間に挟まっていた. 小脳中のDA濃度について, 高濃度DBTポリ乳酸ラクチド膜埋め込み群の平均値がcontrolに比べて有意に低かった. 下垂体中のDA濃度については, 人工硬膜群の平均値がcontrolに比べて有意に低かった. 下垂体に関してはHVA/DAについても人工硬膜群の平均値がcontrolに比べて有意に低かった. 【考察】実際の手術のモデルとして, 人工硬膜埋め込み手術を行ったが, 骨の再生の速さにモデルとしての問題が残った. 本研究で見られたDA濃度の変化については, DBT高濃度含有膜については, DBTによるDA濃度の低い部位への影響, 人工硬膜については, DA代謝への影響が考えられるが, 部位における変化の意義や再現性を含め検討する余地がある
ISSN:0021-5082