ショック, ARDSを伴った緊急開腹手術症例の麻酔経験

重篤な合併症を有する緊急開腹手術では, 麻酔管理に難渋することがあり, 時として不幸な転帰をとることがある. 今回著者らは, ショック, ARDSを合併した腸閉塞症患者に対し緊急開腹術を施行後, 呼吸・循環障害が悪化し術後死亡した症例を経験した. 73歳男性. 昭和57年胃潰瘍, 胆石症で手術後, 腸閉塞で10回入退院を繰り返し, 心房細動も併発した. 今回, 腹痛, 嘔吐, 腹部膨満を訴え, 腸閉塞症の診断で入院. 保存的治療を行ったが, 第4病日に高圧浣腸後, 血圧低下(40台), チアノーゼが出現したので緊急手術となった. 術前検査では, 脱水(Ht49%), 白血球減少(2800/μl...

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Hauptverfasser: 村川徳昭, 松木明知
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:重篤な合併症を有する緊急開腹手術では, 麻酔管理に難渋することがあり, 時として不幸な転帰をとることがある. 今回著者らは, ショック, ARDSを合併した腸閉塞症患者に対し緊急開腹術を施行後, 呼吸・循環障害が悪化し術後死亡した症例を経験した. 73歳男性. 昭和57年胃潰瘍, 胆石症で手術後, 腸閉塞で10回入退院を繰り返し, 心房細動も併発した. 今回, 腹痛, 嘔吐, 腹部膨満を訴え, 腸閉塞症の診断で入院. 保存的治療を行ったが, 第4病日に高圧浣腸後, 血圧低下(40台), チアノーゼが出現したので緊急手術となった. 術前検査では, 脱水(Ht49%), 白血球減少(2800/μl), 腎機能障害(BUN31mg/dl, クレアチニン2.3mg/dl), 低蛋白血症, 胸部写真で両肺野にスリガラス様陰影が認められた. 手術室入室時には血圧76/46mmHg, 心拍数114(Af), 低酸素血症(酸素マスク下PaO_2 82.6mmHg), 代謝性アシドーシス(BE-7.5mmol/L), 白血球減少(1100/μl)が認められた. 麻酔導入はケタミン+Sch, 維持はIso+O_2 +Vbで行った. 術中血圧はほぼ安定していた. 腹壁と癒着した小腸の剥離のみで, 絞扼, 腸壊死の所見はなく, 手術は33分で終了した. 手術直後からドブタミンを投与し利尿が得られたが, しだいにSpO_2 が低下した. 気管支ファイバーでは喀痰による気道閉塞はなかった. 胸部写真では両肺野の異常陰影が増強していた. 血圧はしだいに低下し, 尿排出も消失した. 術後2時間には重篤な低酸素血症(PaO_2 40mmHg), 混合性アシドーシス(PaCO_2 68mmHg, BE-12.9mmol/L), 白血球減少(500/μl)も悪化した. 退室時の血圧は80/30mmHgで人工呼吸下に病室に搬送した. その後血圧低下し, カテコラミン投与に反応せずに死亡. 本症例では, 詳細は不明であるが, 術前からのARDSが手術侵襲により悪化するとともに, 循環障害が増悪したため不幸な転帰をとったと推測した. 重篤な合併症を有する緊急開腹術の際には不幸な転帰をとることも稀ではないので, その病態の十分な把握が必要であろう.
ISSN:0288-4348