体腔液塗抹染色標本の観察部位が細胞分類に及ぼす影響について―標準化に向けた試み

体腔液塗抹染色標本の観察部位が細胞分類結果に及ぼす影響については,これまでほとんど議論されていない。今回われわれは,塗抹染色法による体腔液細胞分類の標準化に向けて,下記の検討を行った。対象は,体腔液100例(胸水66件,腹水34件)で,塗抹染色法で作製した標本中の5ヶ所(①および③:辺縁部位,②:中心部位,④および⑤:引き終わり周辺部位)の各々にみられた100個の細胞を,「リンパ球」,「多形核球」,「その他の細胞」に分類し,それらの出現の割合を計測した。次に,その結果と計算盤法で求めた細胞数の割合との相関を検討した。「リンパ球」の中央値は,塗抹標本②で最も多く,②と③,②と④,②と⑤の間に有意...

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Veröffentlicht in:医学検査 2018/10/25, Vol.67(5), pp.643-651
Hauptverfasser: 羽原, 利幸, 保科, ひづる, 小関, 紀之, 内田, 一豊, 小澤, 優, 岡田, 茂治
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:体腔液塗抹染色標本の観察部位が細胞分類結果に及ぼす影響については,これまでほとんど議論されていない。今回われわれは,塗抹染色法による体腔液細胞分類の標準化に向けて,下記の検討を行った。対象は,体腔液100例(胸水66件,腹水34件)で,塗抹染色法で作製した標本中の5ヶ所(①および③:辺縁部位,②:中心部位,④および⑤:引き終わり周辺部位)の各々にみられた100個の細胞を,「リンパ球」,「多形核球」,「その他の細胞」に分類し,それらの出現の割合を計測した。次に,その結果と計算盤法で求めた細胞数の割合との相関を検討した。「リンパ球」の中央値は,塗抹標本②で最も多く,②と③,②と④,②と⑤の間に有意差を認めた(p < 0.01)。「その他の細胞」は,⑤で最も多く,①と⑤,②と⑤,③と⑤の間に有意差を認めた(p < 0.01)。計算盤法と塗抹染色法との相関係数は,「リンパ球」,「多形核球」,「その他の細胞」のいずれも観察部位①~⑤の平均が一番高かった。一般的に塗抹染色法では,大型の細胞が標本の引き終わりに,小型の細胞が中心に多くみられるが,この偏りは観察部位を変えて複数ヶ所の細胞を計測し,平均値を得ることでほぼ解消した。従って,塗抹染色法による細胞分類のために,辺縁部位の2ヶ所,中心部位の1ヶ所,引き終わり周辺部位の2ヶ所の計5ヶ所でそれぞれ100個,合計500個について細胞を分類するという観察方法を,標準化に向けた提案としたい。
ISSN:0915-8669
2188-5346
DOI:10.14932/jamt.18-9