臨床・基礎研究におけるシロシビン治療のUp-to-Date

大うつ病性障害患者の30~40%はSSRIなど既存の抗うつ薬を適切に使用しても,症状の十分な改善が認められない治療抵抗性うつ病である.2016年のCarhart-Harrisらの報告を皮切りに,マジックマッシュルームの幻覚成分である「シロシビン」が治療抵抗性うつ病に対して,即効かつ持続的な治療効果を示すことが多数報告されている.また,シロシビンは治療抵抗性うつ病のみならず,大うつ病性障害,双極性障害のうつ病相,摂食障害や依存症にも治療効果を示すことが報告された.それら報告を受け,米国食品医薬品局は2018年と2019年にシロシビンが治療抵抗性うつ病および大うつ病性障害の革新的治療薬になり得ると...

Ausführliche Beschreibung

Gespeichert in:
Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:日本薬理学雑誌 2024/07/01, Vol.159(4), pp.214-218
1. Verfasser: 衣斐, 大祐
Format: Artikel
Sprache:jpn
Schlagworte:
Online-Zugang:Volltext
Tags: Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
Beschreibung
Zusammenfassung:大うつ病性障害患者の30~40%はSSRIなど既存の抗うつ薬を適切に使用しても,症状の十分な改善が認められない治療抵抗性うつ病である.2016年のCarhart-Harrisらの報告を皮切りに,マジックマッシュルームの幻覚成分である「シロシビン」が治療抵抗性うつ病に対して,即効かつ持続的な治療効果を示すことが多数報告されている.また,シロシビンは治療抵抗性うつ病のみならず,大うつ病性障害,双極性障害のうつ病相,摂食障害や依存症にも治療効果を示すことが報告された.それら報告を受け,米国食品医薬品局は2018年と2019年にシロシビンが治療抵抗性うつ病および大うつ病性障害の革新的治療薬になり得るとそれぞれ発表した.また,シロシビン投与により認められる副作用としては,頭痛や疲労感など一過性の軽微なものしか報告されておらず,安全に使用できると考えられている.我々は2023年の本誌において(第158巻 第3号 229~232ページ),シロシビンをはじめとしたサイケデリックス(セロトニン作動性幻覚薬,精神展開薬)の抗うつ作用におけるセロトニン5-HT2A受容体(5-HT2A)の役割に関する総説を報告したが,それを踏まえ,本稿ではシロシビンの抗うつ作用など精神疾患治療効果に関する臨床および基礎研究の最新報告を紹介し,さらに最近の我々の研究にも触れつつ,シロシビンの可能性やシロシビン治療の問題点についても考察する.
ISSN:0015-5691
1347-8397
DOI:10.1254/fpj.24007