2 難治性白血病, 癌治療におけるアポトーシスとオートファジー

「要約」癌治療において細胞死の機序を解明することは, 新規治療法の開発や耐性化の克服などの治療成績の向上や, 副作用の軽減など, 患者治療に直結する重要な研究である. In vitroの培養系における各種白血病や癌細胞株の研究から, 細胞死の1つであるアポトーシスについては機序の解明が進んでいる. しかしながら, 生体内での細胞死の機序は不明のことが多く, また固形腫瘍における細胞死では, 近年, アポトーシス以外の細胞死が注目されている. 我々は, 白血病, 固形腫瘍いずれにおいても以下の系において, アポトーシス以外の細胞死の1つである, オートファジーの関与を証明した. (1)難治性白血...

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Veröffentlicht in:日本薬理学雑誌 2009, Vol.134 (4), p.184-191
1. Verfasser: 足立壮一
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:「要約」癌治療において細胞死の機序を解明することは, 新規治療法の開発や耐性化の克服などの治療成績の向上や, 副作用の軽減など, 患者治療に直結する重要な研究である. In vitroの培養系における各種白血病や癌細胞株の研究から, 細胞死の1つであるアポトーシスについては機序の解明が進んでいる. しかしながら, 生体内での細胞死の機序は不明のことが多く, また固形腫瘍における細胞死では, 近年, アポトーシス以外の細胞死が注目されている. 我々は, 白血病, 固形腫瘍いずれにおいても以下の系において, アポトーシス以外の細胞死の1つである, オートファジーの関与を証明した. (1)難治性白血病であるBcr-Abl陽性白血病(フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病, 慢性骨髄性白血病)に対して, 従来から上記白血病の特効薬とされている, imatinib mesylateよりも有効な薬剤INNO-406によるin vitroにおける細胞死の機序にオートファジーが関与し, in vivoにおいても非アポトーシスの細胞死がみられること, (2)難治性固形腫瘍rhabdoid腫瘍におけるin vitroおよびin vivoでのHDAC阻害薬(depsipeptide)による細胞死の機序にオートファジーが関与し, AIFの核からミトコンドリアへの偏移がオートファジーに関与すること, の2点である. いずれの系においても, オートファジーを抑制すると細胞死が増強されたことから, オートファジーの抑制は難治性白血病, 固形腫瘍の治療ターゲットとなりうる可能性が示唆され, オートファジーに関与する新薬の開発が望まれる.
ISSN:0015-5691